自治体の観光戦略とは?観光戦略の分析や誘客に役立つツールを紹介

自治体における観光戦略で目指すのはその地域が持つ魅力を活かし、観光客を誘致することです。

自治体が観光誘客に成功すると地域で交流する方々が増えるだけでなく、旅行・宿泊産業や飲食産業、土産品の販売など地域の雇用の創出を促します。

地方自治体にとって観光戦略を構築し実行するのは、経済の活性化のためにも必要不可欠です。

 

しかしながら、他の地域と差別化を図り、観光客に興味関心を持ってもらえるような観光地やコンテンツを作るのは容易ではありません。

 

今回は観光戦略の3つの柱について説明し、自治体の観光戦略における課題を深堀りして解説します。

さらに、戦略の構築や誘客および分析をするために役立つツールもご紹介します。自治体のマーケティング担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

目次を表示

  1.  観光戦略の3つの柱
     1.1 コスト・リーダーシップ戦略
     1.2 差別化戦略
     1.3 集中戦略

  2.  自治体で観光戦略における課題とは
     2.1 観光資源を活用できていない
     2.2 対外的な情報発信が難しい
     2.3 インフラ整備が遅れている

  3.  自治体の観光戦略を立てるには?
     3.1 現状分析
     3.2 目標設定(KPIの設定)
     3.3 戦略策定
     3.4 計画策定
     3.5 実行
     3.6 効果測定

  4.  自治体の観光戦略の構築や分析に役立つツール
     4.1 多言語対応のできるチャットボット
     4.2 情報発信サービス
     4.3 データ分析ツール
     4.4 オンライン決済システム
     4.5 SNS
     4.6 Web広告

  5.  自治体の観光戦略を支援する広告配信サービス「まちあげ」とは
     5.1 観光のニーズにあわせたターゲティング広告配信が可能
     5.2 広告配信後に興味・関心をもった方を可視化
     5.3 来訪計測や推定消費額を算出し費用対効果を可視化

  6.  まとめ


1.観光戦略の3つの柱



観光戦略とは、観光地に観光客を増やすために構築し実行する自治体の戦略です。

既存の観光資源をブラッシュアップし有効活用したり、観光客として来訪を望むユーザー層に向けて新しい観光施設を新設するなどの取り組みが挙げられます。


観光客を増やす試みは、数多くの地方自治体でおこなわれています。観光客を増やすにはほかの地方自治体と比較し、観光地としての魅力が備わっていなければなりません。


また興味・関心を持っているユーザーに適切にアプローチしなければ観光客の増加は見込めません。競合するほかの地方自治体に対して、優位性のあるポジションを獲得し競争に打ち勝つ必要があります。


ここで、アメリカの経営学者のマイケル・ポーターが提唱している競争優位に立つための3つの基本戦略をご紹介します。

 

観光戦略の3つの柱


1.1 コスト・リーダーシップ戦略



コスト・リーダーシップ戦略とは、商品やサービスのコストを抑えて提供し競争で優位に立つ戦略です。

商品やサービスを競合より安価な価格帯で提供する方法と、大量仕入れで単価を下げたり固定費などのコストを下げて利益率を高める方法があります。ただし、競合他社も同様の戦略を立ててくることも想定され、価格競争につながるおそれもあります。



1.2 差別化戦略



差別化戦略とは、商品やサービスの価値を高めて競合他社と差別化を図る戦略です。

差別化した結果、ユーザーのニーズを捉えることができるのかを見極めることが大切です。



1.3 集中戦略



集中戦略とは、特定のユーザーや地域、商品など限られたターゲットに集中して戦略を展開する手法です。ターゲットを限定することにより、市場で優位性を確立しやすい点が特徴です。



2.自治体で観光戦略における課題とは



自治体の観光事業を推進するうえでの課題は以下のとおりです。


  • ・観光資源を活用できていない
  • ・対外的な情報発信が難しい
  • ・インフラ整備が遅れている
  • ・観光に携わる人材が不足している

それぞれ詳しくみていきましょう。

 


2.1 観光資源を活用できていない



自治体が観光戦略に対して抱える課題のひとつに、観光資源を活用できていない点が挙げられます。観光名所や特産物があるにも関わらず、情報の発信がしっかり出来ておらず認知度が拡大していない地域も多いのではないでしょうか。


2022年度観光プロモーションに関する自治体実態調査によると、観光事業の推進にあたって課題に感じる点として。以下が挙げられています。

 

  • ・公共交通が行き届いていない
  • ・観光地の認知度が低い
  • ・環境整備に関する人員や予算の不足

観光資源があっても、必要なインフラの整備が遅れていたり、人員や予算が不足していたりして、魅力を上手く伝えられていない自治体も多く見受けられます。



2.2 対外的な情報発信が難しい



観光客は、観光目的で訪れる地域について来訪するまでにさまざまな情報を調べます。

観光客が情報収集する手段は、ホームページのほかパンフレットや旅行雑誌、旅行会社や旅行に関するポータルサイト、SNSなど多種多様です。

そんな観光客のニーズに合わせて、自治体はホームページやパンフレットの更新作業や、複数のSNSでの投稿などをおこなっています。


しかしながら、多くの自治体は情報を掲載するメディアや発信する手段の増加に対応しきれておらず、人員不足などにより効果的な情報発信が難しい状況です。



2.3 インフラ整備が遅れている



観光地として多くの観光客を集めるには、インフラの整備が欠かせません。

観光訴求のために整備が必要なインフラの代表例は、以下のとおりです。


  • ・道路・バスや列車などの交通網宿泊施設
  • ・Wifiなどの通信網(Wifiなど)
  • ・訪日外国人にも対応可能なオンライン決済手段

インフラ整備には計画の策定や予算の確保が必要となるため、短期間で解決するのは困難な課題といえます。

 

 

2.4 観光に携わる人材が不足している



今年度は、全国旅行支援や外国人の受け入れ制限の解除にともない、日本国内を旅行する観光客が増加しています。


しかしながら、宿泊業への従事者は少しずつ増加傾向にあるものの、新型コロナウイルス感染拡大前の水準には達してません(※1)。

宿泊需要の回復にともなう求人の増加により新規採用が難しくなったことや、離職率が高いことも相まって宿泊業は人材不足が深刻化しています。


実際に、国土交通省の資料によると2023年3月の調査で宿泊・飲食サービスは、各産業の中で人員不足感が最も高い(※2)という結果が出ています。今後ますます伸びるであろうインバウンド需要に応えるためには、観光に携わる人材の確保を急がなければなりません。


※1)マイナビキャリアリサーチLab 宿泊業レポート(2023年5月)

※2)観光庁 令和5年版観光白書について



3.自治体の観光戦略を立てるには?



自治体が観光戦略を立てる手順について、下記の6段階に分けて解説します。

 

自治体 観光戦略

  •  
  • ・現状分析
  • ・目標設定(KPIの設定)
  • ・戦略策定
  • ・実行計画を策定
  • ・実行
  • ・効果測定

ここでは、富山県黒部市の成功例を元に解説します。

 


3.1 現状分析



富山県黒部市では、排ガスによる環境の悪化と、観光客が減少しているという悩みを抱えていました。観光客を増やすには排ガスの排出量を減らすこと、および観光客を誘致するための施策が必要だと現状分析しました。



3.2 目標設定(KPIの設定)



黒部市は排ガスの削減と、水資源が豊富なことを武器に「先進的なエコ温泉リゾート」として宇奈月温泉への観光客の増加を目標に掲げて戦略を策定しました。


観光客の増加に関しては、宇奈月温泉の宿泊者数のKPIを設定しました。KPIとは組織の業務のパフォーマンスを計測・監視するために置く指標です。黒部市は2014年に約26万人だった宿泊者数を、5年後の2019年に35万人に増やす(※3)という目標を立てました。



3.3 戦略策定



先進的な「エコ温泉リゾート」としての強みを出すために、黒部市はさまざまな戦略を策定しました。まず、排ガスを削減するために民間主体で市と協力しながら「宇奈月プロジェクト」を設立。さらに、排ガスによる環境悪化を防ぐために、電気バスの導入を決定しました。


黒部市の豊富な水資源を活用して作られた小水力発電所で発電した電力を、電気バスに利用しています。



3.4 計画策定



「排ガスの削減」と「観光客の増加」という目標を達成するために立てられた計画は次のとおりです。


  • ・黒部川から取水した「小水力発電所」を整備
  • ・小型の電気バス「EMU」を導入
  • ・宇奈月ダムの近くに観光・交流施設「とちの湯」を整備
  • ・温泉街に「湯めどころ宇奈月」を整備

エコ温泉リゾートとしてほかの自治体と差別化を図るために、黒部市はこれらの計画を策定しました。



3.5 実行



小型電気バス「EMU」は2012年に導入され、「とちの湯」は2002年、「小水力発電所」は2014年、「湯めどころ宇奈月」は2016年にそれぞれ整備されました(※4)。



3.6 効果測定



電気バスEMUの乗車人数は20124年度の時点で1,992人だったのに対し、2016年度には20,208人まで増加しました(※5)。また、2014年に約26万人だった宇奈月温泉の宿泊者数は、2019年には目標の35万人には届かなかったものの約31万9000人(※6)に増加しました。


観光戦略の効果測定として、宿泊数の全体的な推移は各自治体で算出可能です。

しかしながら、それぞれの地域に興味・関心を示した方のうち、実際に訪れた来訪者数の割合を計測することは容易ではありません。自治体でおこなうさまざまな観光戦略に対して、費用対効果を算出するのは難しいといえます。


※3,4,5)内閣府地方創生推進事務局 稼げるまちづくり取組事例集「地域のチャレンジ100」

※6)玉川大学観光学部紀要 第 8 号 2020 年,pp. 31~46 [研究論文]富山県宇奈月温泉における観光の現状と課題



4.自治体の観光戦略の構築や分析に役立つツール


 

観光戦略を立てるには現状分析や課題の洗い出しが必要です。観光客を増やすには地域での過ごしやすさや案内のわかりやすさも大切なポイントです。現状分析から観光客の顧客満足度の向上まで、役立つツールをご紹介します。



4.1 多言語対応のできるチャットボット



寄与する予約の問い合わせのみならず、近隣の観光地に関する問い合わせなどの対応に追われる自治体や観光協会・宿泊施設が多いのは課題といえます。


訪日外国人の増加により多言語での問い合わせも増えました。

これにより、英語や中国語で観光案内ができる多言語対応型のチャットボットを導入している観光協会のホームページが増えてきました。チャットポットとは「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した「自動会話プログラム」のことです。


チャットボットを導入すると24時間休みなく質問に対する回答ができるため、人員コストの削減につながります。また、回答内容を均一化できるため、対応した職員によって案内が異なるといった課題も解決できます。


旅行に特化した代表的なチャットボットサービスは「tripla」や「talkappi」などです。



4.2 情報発信サービス



自治体が情報発信する際に活用できる主なサービスは、以下のとおりです。


・Googleビジネスプロフィール
・マップコード対応のカーナビ・システム
・デジタルサイネージ
・Japan 2 Go(訪日外国人向けアプリ)

特にGoogleビジネスプロフィールは、無料で利用できるので有効活用しましょう。Googleが提供している無料の情報管理ツールで、Google検索やGoogleマップで検索される情報を登録・管理することができます。



4.3 データ分析ツール



観光戦略を構築するには、地域の状況や社会状況・経済状況を把握することが重要です。

データ分析で使用できる数値は、総務省統計局や各都道府県や市区町村の統計課のホームページなどで確認できます。


観光客の統計は、観光庁のホームページ等で閲覧可能です。それ以外にも、簡単にオープンデータを収集できるツールがあるので、ご紹介します。


・RESAS
・観光情報プラットフォーム
・旅行年報
・Google Trends
・AIアナリストforツーリズム
・うご-Kit

     

「RESAS(地域経済分析システム)」は、官民のビッグデータを集約・可視化した自治体の地方創生の取り組みを情報面で支援するシステムです。


「観光予報プラットフォーム」は、日本観光振興協会が運用しているサイトです。旅行会社などがデータを提供しており、2022年8月現在約1.5億泊(※7)の宿泊予約や実績のデータをもとに、半年先までの需要予測値をチェックできます。


日本交通公社が毎年発表している「旅行年報」は、書籍は有料ですがPDFは無料で閲覧可能です。日本人・訪日外国人の旅行における実態調査や意識調査の結果、観光地ごとの宿泊者数などが掲載されています。


※7)観光予報プラットフォーム推進協議会 【観光予報プラットフォーム】操作説明書



4.4 オンライン決済システム



経済産業省が発表した「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」によると、キャッシュレス決済の比率は36%にのぼります。その内訳は、クレジットカードの決済が30.4%、電子マネーが2%、QRコード・バーコード決済が2.6%、デビットカードが1%です。


キャッシュレス決済の比率は年々増加しており、さまざまな決済方法に対応できるオールインワンの決済端末が求められています。以下、代表的なオールインワンのモバイル型決済端末です。


・Square
・楽天ペイ
・スマレジ

訪日外国人は、それぞれの国ごとに使用する決済方法が異なります。1つの決済端末で、なるべく多くの決済手段に対応できるものを選択しましょう。



4.5 SNS



自治体が、自地域に観光客を誘致するためには、SNSでの情報発信や宣伝が不可欠です。代表的なSNSをご紹介します。


SNS

概要

Instagram

Meta社が運営している写真や動画の投稿ができるSNS

YouTube

Google社が運営している動画共有サービス

TikTok

ショート動画をシェアできるスマートフォン向けのSNSサービス

LINE

無料通話やメッセージの送受信ができるコミュニケーションアプリ

Facebook

Meta社が運営している実名登録型のSNS

WhatsApp

アメリカ発のシンプルなメッセンジャーアプリ

Wechat

中国版のLINEのようなメッセンジャーアプリ


SNSはそれぞれに特色があります。ビジュアルで訴求する投稿にはInstagram、映像で情報を伝えたい場合はYouTubeといった使い分けが肝心です。また訪日外国人の中でも、中国に向けて配信するのであればWeChatの利用を検討するとよいでしょう。



4.6 Web広告



自治体が自地域の観光地などの認知度の向上に用いる手段として、Web広告の活用も視野に入れる必要があります。代表的なWeb広告は、以下のとおりです。


Web広告の種類

概要

検索連動型広告(リスティング広告)

検索エンジンの検索結果上位に表示されるテキスト型広告

ディスプレイ広告

Webサイトやアプリの広告枠に画像や動画を掲載できる広告

動画広告

YouTubeなどを中心とした動画を活用した広告

SNS広告

各SNSに表示される広告

DSP

複数のアドネットワークの広告枠を買い付けしたり投稿・分析をおこなうプラットフォーム


配信する目的に応じて、どのWeb広告を使用するのかを検討しましょう。

潜在層に向けて認知度を高めたいのであれば、ディスプレイ広告や動画広告が有効です。すでに認知されている検討段階の顕在層には、検索連動型広告を活用するとよいでしょう。


観光戦略の一環として自治体がWeb広告を活用する際は、観光や旅行に興味・関心のあるユーザーをターゲットとして絞り込んだ広告配信が効果的です。

 


5.自治体の観光戦略を支援する広告配信サービス「まちあげ」とは



まちあげ

 

広告配信サービス「まちあげ」とは、自治体の観光戦略を支援するマーケティングプロダクトです。「まちあげ」の特徴を3つご紹介します。


5.1 観光のニーズにあわせたターゲティング広告配信が可能



自治体が課題としている、観光のニーズや課題に合わせたターゲティング広告配信が可能です。


「まちあげ」と連携しているライフスタイルデータ(位置情報・旅行・お出かけメディアなどの閲覧データ)を基に、固有のターゲティングを作成できます。具体的には、旅行メディアを閲覧している観光興味関心層や、位置情報データを活用した過去に訪問履歴が有る方にアプローチできます。



5.2 広告配信後に興味・関心をもった方を可視化



「まちあげ」は、広告の配信後に興味・関心を持ったユーザーを可視化できる点が自治体の観光戦略に適しています。

さらに、アンケートオプションを活用すると、観光地への興味関心や来訪意欲のあるユーザーの絞り込みも可能です。

5.3 来訪計測や推定消費額を算出し費用対効果を可視化



「まちあげ」で配信した広告を閲覧して興味をもったユーザーが、実際に自地域に来訪したのかなど、効果計測としてレポートを提出できることが特徴です。


また来訪計測のほか、観光庁の旅行・観光消費動向調査の数値を参考にした、推定消費額の分析も可能です。費用対効果を可視化することで、今後のプロモーションに活かすことが可能です。

 

費用対効果を可視化


6.まとめ

 

自治体の観光戦略についてまず、自治体が抱える課題と、観光戦略の構築方法について解説しました。観光戦略を構築するには課題解決はもちろんのこと、さまざまな角度からの情報収集やデータ分析が求められます。

 

自治体で観光戦略を立てるうえで役立つツールもご紹介しました。

今回ご紹介したツールを活用しつつ、観光客を誘致するために自地域の認知度を拡大しましょう。

 

記事の最後に自治体の観光戦略を支援する広告配信サービスとして、「まちあげ」をご紹介しました。

観光戦略を構築して費用を投じた施策の費用対効果を可視化できるのが特徴です。観光客を増やしたいと考えている自治体の観光戦略のご担当者は、ぜひ「まちあげ」の導入をご検討ください。

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