地方では都市部への人口流出にともなう少子高齢化や過疎化が進んでおり、自治体はシティプロモーションを実施して、地域創生や地域活性化を目指しています。しかしながら、各自治体でおこなわれている取組み数も多く、年々差別化が難しくなり効果を出しづらい状況が続いています。
シティプロモーションで成果をあげるには、自治体が単独で実施するのではなく、地域の観光資源を活用して住民協働でおこなうことが重要です。また、移住や定住の増加を目指すだけでなく、関係人口の増加やシビックプライド(※)を育む必要があります。
本記事では、シティプロモーションの目的・課題や、自治体と住民協働で成功したシティプロモーションの事例について解説します。記事の後半では、関係人口の増加やシビックプライドを育むために活用できる「まちあげ」のサービスもご紹介します。
自治体と住民協働でシティプロモーションを成功に導くためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までご覧ください。
※シビックプライド:地域への誇りと愛着
シティプロモーションとは、各自治体が地域経済の活性化を目指しておこなう活動の総称です。地方創生や地方経済の活性化と表現する場合もあります。
少子高齢化による人口減少にともない地方では過疎化が進んでおり、資源や人材が東京などの都心部に集中している状況です。過疎化が進む地方では、地域の魅力を住民および域外の多くの方に発信するシティプロモーションが重要です。
ここからは、シティプロモーションをおこなう目的・必要とする理由や期待される効果について解説します。
シティプロモーションをおこなう目的として挙げられるのは観光振興です。地域の観光資源を活用し、観光客の来訪増加を目指します。
観光客が増えて地域が活性化すると、住民の地域への愛着も高まる傾向があります。加えて、定住や移住を検討する方も増加するでしょう。定住・移住者が増加すると自治体の経営資源の獲得にもつながります。
以下の表で、3つの自治体のシティプロモーションの定義をご紹介します。
このように、各自治体によって定義付けしている内容は異なるものの、魅力を発信し来訪者や定住・移住者の増加を目指す方向性は同一といえるでしょう。
自治体がシティプロモーションを積極的におこなう理由は、少子高齢化や過疎化によって働き手が減少しているからです。働き手の減少はすなわち人口そのものの減少を意味します。
その結果、地方の税収や企業の雇用が減少。働ける職種が限られている点や賃金の低さから多くの若者が都心部に流出し、過疎化に拍車がかかるという悪循環に陥っています。住んでいる地域に愛着を持ってもらうためにも、シティプロモーションが不可欠です。
シティプロモーションの主な情報発信ツールは、各種メディア・SNS・動画共有プラットフォームYouTubeなどです。シティプロモーションで期待できる効果は、一般的に次の4つです。
各種メディアやSNSでの情報発信・拡散によって地域の認知度を高める効果が期待できます。認知度向上にともない、観光客の増加も見込めます。定住や移住を検討する段階に移行するには時間を要しますが、関係人口の増加も期待できるでしょう。
シティプロモーションをおこなう中で、シビックプライドという言葉を耳にする機会が増えました。シビックプライドを簡単に説明すると、Civic(市民・都市)と、Pride(誇り)から成り立つ言葉で、都市や地域に対する市民の誇りという意味を持ちます。
郷土愛と同様と捉えがちなシビックプライドですが、両者は少し意味が異なります。シビックプライドは自身が生まれ育った地域に限定されません。移住した地域に誇りや愛着を持つこともシビックプライドに該当します。
地方創生や地域活性化を図ってシティプロモーションを積極的に推進しても、期待したような成果が得られず失敗に終わることもあるでしょう。ここでは、シティプロモーションをおこなううえでの3つの課題について解説します。
自治体がシティプロモーションをおこなう目的や目標として、定住・移住者の増加を目指すのは自然の流れといえます。しかしながら、長期的な定住・移住者の増加を達成するのは簡単ではありません。
地域に興味・関心を持って実際に移住した方々の中には、少なからず「移住に失敗した」と感じてる方もいらっしゃるでしょう。都心部から地方への移住者が感じる主な不満は、以下のとおりです。
近年は、定住者や移住者の増加を目指すのではなく、関係人口の増加やシビックプライドの醸成を目標に掲げる自治体も増えてきました。
2008年頃から、シティプロモーションに取り組む自治体が現れました。一部の自治体が先行しておこなったシティプロモーションは、先駆者の成功事例として紹介されるケースが多いでしょう。
しかし昨今、実施していない自治体は無いといっても過言ではないほど盛んにシティプロモーションがおこなわれています。地域の魅力を発信したとしても差別化を図りづらく、ユーザーが検索しても興味・関心を持ちづらい状況になっています。
目標がきちんと設定されていないシティプロモーションの計画も見受けられます。地域の魅力や文化などを発信し、ブランド力の向上を掲げたとしても、具体的な達成目標がなければ効果が検証できません。
あるいは定住人口の増加を目標に掲げたとしても、日本の人口は減少の一途をたどり少子高齢化がますます加速しています。その中で定住・移住増の目標を掲げても、達成するのは困難といわざるをえません。
シティプロモーションをおこなうにあたって、適切な政策の目標設定は不可欠です。
シティプロモーションの目的や課題をご理解いただいたところで、続いて、今後のシティプロモーションで求められることを解説します。
関係人口とは、地域に定住・移住した人々の人口や観光に訪れた交流人口ではありません。地域に関心を持ち、地域や住民と関わり続けようとする人々を指します。関係人口はファンベースと仕事ベースに分かれています。
デジタル田園都市国家構想総合戦略において、関係人口増加の実現に向けてデジタルの力の活用が必要だと記されています。また、デジタルの力による地方の社会課題解決・魅力向上のための重要な要素の一つとして、「人の流れをつくる」ことが挙げられています。
具体的には、地理的・時間的な条件に関わらずどこでも同じような働き方を可能とする環境整備です。これによって地方における雇用の創出を促し、地方への人の流れを生みだす効果が期待されます。
こうして関係人口が地域を往来すると、地域経済の活性化や地方の魅力向上が進み、地域の発展が期待できるでしょう。
活動人口は、「地域に対し誇りや自負心があり、地域づくりにいきいきと活動する者」と定義付けられます。たとえ地域に移住や定住する人が少なくても、活動人口の増加によって元気で価値のある地域となりうるでしょう。
シビックプライドとは、地域に住む住民として地域に対する誇りを持つことです。シビックプライドを育むには、地域住民としての当事者意識と地域がより発展していくために貢献する意識の醸成が重要です。
シビックプライドを育むには、地域内に対する働きかけが必要です。自らの住んでいる地域に誇りを持つ方々が増えると、行政と市民が対等な立場で協力する住民協働でのシティプロモーションの活動も活性化します。
ここからは、住民協働でおこなわれたシティプロモーションの事例をご紹介します。
千葉県流山市では、「母になるなら、流山市」をキャッチフレーズに、子育て世代をターゲットにシティプロモーションを展開しています。シビックプライドを育てて「住み続ける価値の高いまち」の実現を目指しています。
シティプロモーションを担当する専任の職員を、民間から公募するといった新たな取り組みをおこないました。ターゲットを絞ったマーケティング戦略の元、子育て世代が好むイベントを開催してシビックプライドを育んでいます。
子育て世代をターゲットにしたイベントの具体例として、「ママ友作りコミュニティによるオンライン上の自主企画イベント」が挙げられます。このような住民が主体となったイベントを積極的におこなっている流山市は、30代〜40代を中心に人口増加が続いています(※1)。
※1)流山市 人口増加中
群馬県高崎市では、少子高齢化や人口減少により飲食店の後継者不足が続いています。このままでは後継者不足で閉店を余儀なくされてしまう、いわば絶滅の危機に瀕している個人飲食店をまとめて紹介するWebサイト「絶メシリスト」を作成しました。
Webサイト上で絶品ローカルグルメを紹介するほか、後継者も併せて募集しているのが特徴です。人材不足解消のための一つの方法として活用されています。絶メシリストを原案にしたテレビドラマも制作されました。
この「絶メシリスト」の取り組みはテレビドラマの反響もあり、ほかの自治体へ波及するなど社会現象になりました。非常に影響力の大きい、地域住民を巻き込んだシティプロモーションといえるでしょう。
埼玉県深谷市は、特産品のねぎを活用したシティプロモーションをおこなっています。ねぎを活かした新習慣として、「ねぎらい」の「ねぎ」に掛けて勤労感謝の日(11月23日)に「ねぎ」を贈る取り組みを始めました。
母の日に感謝の気持ちで贈られるカーネーションやバレンタインデーに贈られるチョコレートからヒントを得て、11月23日(ねぎらいの日)にねぎ束を配布します。
深谷市の特産品であるねぎを活用したイベントで、地域の魅力発信や住民が自地域に愛着心を持つきっかけづくりとなりました。
福井県鯖江市では、2014年より市民協働でまちづくりに取り組む「鯖江市役所JK課」プロジェクトを開始しました。JK課の名のとおり活動メンバーは地元の女子高生(JK)です。市民・団体や地元企業・大学・地域メディアなどと連携して、自分たちのまちを楽しむ企画や活動を実施しています。
総務省の平成27年度ふるさとづくり大賞において総務大臣賞を受賞(※2)。そのほか、高校の現代社会の副読本の表紙を飾り、JK課でおこなってきた活動事例や写真が採用されるなど、全国的にも認知が広がっています。
※2)総務省 平成27年度ふるさとづくり大賞
山口県周南市は、「ここから、こころつながる。周南市」を合言葉にシビックプライドを育むシティプロモーションを実施しています。周南市の市民と自治体職員が協働でおこなっているシティプロモーションの活動内容は以下のとおりです。
周南市に住んでいる方並びにゆかりのあるメンバーが集まり、周南市の魅力を届けるスペシャルサイトやガイドブック・フリーペーパーを作成しています。
兵庫県丹波市は、消滅する可能性のある自治体の一つに挙げられていました。丹波市の課題は、人口が減少してもまちの活力を維持して持続可能な社会を確立することです。
2017年から2019年の3年間にわたって、プロ野球ウエスタンリーグの試合の誘致やサイクリングイベント「ツールド丹波」など様々な事業を展開。市外への発信を積極的におこなって誘客促進を図りました。
自治体だけでなく、市内の企業や市民活動団体がシティプロモーション事業を展開し、企業・団体と住民との交流やお互いの企業・団体間による連携も生まれました。
埼玉県北本市は、令和3年にシティプロモーションアワード金賞を受賞しています(※3)。北本市も消滅する可能性のある市町村に認定されており、地域活性化が課題でした。
北本市は20代から40代の女性が転出する割合が高いことに注目。従来の移住者への補助金の支給や、大手代理店を活用したプロモーションでは課題が解決しないと判断し、取り組む内容を変更しました。
令和元年より自治体の若手職員と市民が一緒にワークショップやフィールドワークを開始。そこで、「&green―豊かな緑に囲まれた、ゆったりとした街の中で、あなたらしい暮らしを〜」というコンセプトが誕生しました。市外からの注目も集め、人口も約17年ぶりに社会増に転じました(※4)。
(※4)総務省統計局 3つの意欲を測る 北本市シティプロモーション事業
自治体のシティプロモーションは地域住民との協働が不可欠です。地域住民と協働でプロモーションを実施することで、関係人口・活動人口の増加やシビックプライドの醸成につながります。「まちあげ」は、関係人口・活動人口を増やすための広告配信に活用できます。
シティプロモーションによって地域に興味・関心を持つユーザーを増やすためには、自治体の課題やニーズに適したターゲット設定が必要です。
「まちあげ」は、移住者向けターゲティングやゆかりターゲティングなど、ライフイベントや地域によるターゲットの絞り込みが可能です。
「まちあげ」では、シティプロモーションの効果測定に適した分析レポートを作成できます。レポートの主な内容は以下のとおりです。
興味・関心を持って広告を閲覧したユーザーを可視化できるため、効果的な広告配信が可能です。
シティプロモーションは地域内外に向けて魅力を発信をおこない、興味・関心を持ってもらうように働きかける施策です。
本記事では、シティプロモーションが抱える課題や今後どのような取り組みが必要になるのかを説明しました。人口減少が食い止められなくても、関係人口・活動人口が増加したりシビックプライドを持って地域を盛り上げようと行動する方が増えたりすると、地域活性化につながります。
関係人口・活動人口の増加やシビックプライドの醸成を目的とした住民協働によるシティプロモーション事例を参考に、地域の魅力を効果的に発信しましょう。
記事の後半には、シティプロモーションを成功に導く広告配信プラットフォーム「まちあげ」をご紹介しました。これから住民協働でシティプロモ―ションの実施を検討している代理店のご担当者は、ぜひ参考にしてください。