台湾向けインバウンド市場は、近年急速に復調しています。2023年5月の訪日台湾人の数は30万人と、前年同月比約160倍を上回る勢いです(※)。
台湾人観光客は日本の食文化や歴史、自然景観などに深い関心を寄せており、日本の地方都市にも足を伸ばす傾向が見られます。
しかし、すべての自治体がこの波に乗れているわけではありません。
なぜなら、台湾人観光客を惹きつけ、彼らに再訪してもらうための具体的な施策が必要だからです。
この記事では、その施策を成功させるための秘訣を解説します。
さらに、訪日インバウンドにおける台湾市場の現状と、台湾人観光客が何を求めて日本を訪れているのかを分析します。
日本の各自治体がどのような施策に取り組んでいるのか、具体的な事例をご紹介するので参考にしてください。
ぜひこの記事を最後までご覧いただき、多くの台湾人観光客が訪れ、再訪したくなるような魅力的な観光地を創出するためのヒントを得てください。
※:JNTO 訪日外客数(2023年5月推計値)
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まずは、日本を訪れる台湾人観光客の特徴についてご紹介します。
訪日台湾人の観光の動向やその背景にあるものを分析することで、より効果的なマーケティング戦略に役立てましょう。
台湾は深い親日感情を持つ国として知られています。
これは、1896年から1945年までの日本統治時代への郷愁が根底にあるためです。この感情は現代の台湾人にも受け継がれ、日本に対する強い関心と愛着が根付いているのです。
また、1994年以降台湾では日本のテレビドラマの放映が解禁され、日本の大衆文化やアニメ、コスプレなどのサブカルチャーは、若年層を中心に広く受け入れられています。例えば木村拓哉・AKB48・ハローキティ・ポケモンなど、日本の芸能人やキャラクターは台湾でも大人気です。
訪日する台湾人観光客の大きな特徴は、リピーターの割合がとても高い点です。平成29年訪日外国人消費動向調査によると、観光・レジャー目的の訪日台湾人のうち80%がリピーターです。
さらに、10回以上の訪日経験を持つヘビーリピーターが15%にのぼることがわかっています。
訪日台湾人には、滞在期間や旅行スタイルにも特徴があります。訪日回数とともに平均滞在日数も増える傾向にあり、ヘビーリピーターのうち3割以上は日本での滞在期間が7日以上です。
訪日回数が増えると一人旅の割合も増え、地方訪問や個別手配旅行が増える傾向も見られました。
また、リピーターほど旅行中の支出も増え、特にヘビーリピーターは1回目の訪日に比べて2割以上支出が増加します。ヘビーリピーターは「日本の酒を飲むこと」や「温泉入浴」の実施率が高いのも特徴の1つです。
これらの結果は、台湾人観光客の消費傾向を理解し、より効果的なマーケティング戦略を立てるために重要な参考資料といえるでしょう。
訪日観光客の大きな割合を占める台湾人の動向は、日本のインバウンド市場に大きな影響を及ぼしています。
ここでは、台湾からの訪日観光者数の推移や消費額、コロナパンデミックの影響など、訪日インバウンドにおける台湾市場の現状を深堀りしていきます。
2023年6月12日に日本政府観光局(JNTO)が発表した「訪日外客数(2023 年 5 月推計値)」によれば、2023年5月の訪日台湾人数は30万3,300人にのぼりました。
これは、日本と台湾双方の水際措置緩和や航空座席の供給量増加の影響によるものとされています。さらに、台北から小松空港や羽田空港への直行便が増便し、訪日観光客数の回復を支えているようです。
訪日インバウンドにおける台湾市場を分析するうえで、台湾人観光客の消費傾向も見逃せません。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、2023年1-3月期の訪日台湾人の旅行消費額は、全訪日外国人旅行消費額の約15.1%を占める1,535億円に達しました。
これは、台湾人観光客が日本のインバウンド市場における重要な位置を占めることを示す数値といえます。
続いて、コロナパンデミックが台湾からの訪日旅行に及ぼした影響についてみていきましょう。2022年10月以降、海外旅行が事実上再開された台湾では、健康不安の少ない若年層や中年層を中心に訪日旅行が回復の兆しを見せています。ただし、航空料金の高騰や日本国内の旅行支援による宿泊費高騰の影響で、現在の訪日台湾人は経済的に余裕のある層が中心です。
また、コロナ禍を経て、台湾社会ではこれまで以上にデジタル化が進展し、デジタルデバイスへの依存度が増加しています。これにともない、自治体や観光事業者にとってもデジタル対応を進めることの重要性が増しているといえるでしょう。
台湾人観光客が日本旅行に求めるものは何でしょうか?日本政府観光局(JNTO)のデータ「台湾市場外国旅行の動向」によると、以下の4つの要素が重要視されてることがわかります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
日本でのショッピングは台湾人旅行者にとって大きな魅力となっています。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、2023年1-3月期の訪日台湾人の旅行消費額のうち、買い物代は約3分の1を占める520億円と、非常に大きな市場です。
購入品目に着目すると、医薬品・化粧品・健康グッズや食品・菓子類、家電製品や衣服などの購入率が高いことがわかります。
9割近くが買い物をする場所としてドラッグストアを挙げており、ドラッグストアは訪日台湾人にとって買い物スポットとして欠かせない存在といえるでしょう。
日本の食文化は台湾人観光客に大変な人気を博しています。
新鮮な魚介類や季節の旬を感じさせる和食は、一年中温暖な台湾とは異なる日本の伝統的な食文化です。出汁を使った繊細な料理方法が台湾人観光客を惹きつけており、そのほかにもすき焼きや天ぷら・ラーメンなども人気があるようです。
台湾には北投という大規模な温泉地があり、日本でも温泉を楽しみたいと考える台湾人旅行者も少なくありません。また、石川県の歴史ある温泉旅館「加賀屋」が台湾に進出した影響もあり、多くの訪日台湾人にとって本場の温泉旅館を訪れることも観光目的の1つです。
四季の変化が明瞭な日本の自然・景観は、一年中温暖な台湾にはない魅力の1つです。
春の桜、秋の紅葉、冬の雪景色などは、台湾人観光客に人気が高く、各地の自然・景勝地を訪れる旅行者が増えています。特に北海道や沖縄、北陸地方などが人気を集めています。
株式会社アジア・インタラクション・サポートが運営するWebメディア「歩歩日本」の調査をもとに、訪日台湾人に人気の観光地を把握することができます。
「訪日台湾人の人気観光地ランキング2022」によると、訪日台湾人は主に「自然・景勝地」「歴史・文化」「テーマパーク」に強く関心を持っているようです。1つずつご紹介します。
台湾人に人気の観光地では、その雄大さと美しさから世界遺産にも登録されている「富士山」が1位に選ばれました。また、4位にランクインした「立山黒部アルペンルート」や「上高地」「奥入瀬渓流」など都心から距離が離れた自然景観が美しい地域への興味も見て取れます。
神社や仏閣への関心の高さも特徴的です。「浅草寺」や「清水寺」「厳島神社」「出雲大社」などが、その建築美や歴史的価値から人気を博しています。
これらの寺社仏閣は、日本の伝統文化や信仰と深く結びついており、多くの台湾人観光客にとって注目度の高い観光地です。
訪日台湾人はテーマパークへの関心も高く、東京ディズニーリゾートが2位、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが3位にランクインしています。
これらの施設は、世界中から観光客を惹きつける魅力とエンターテイメントを提供しており、多くの訪日台湾人にとって目的地の1つとなっています。
台湾からの訪日旅行者への情報発信には様々な手段があります。それぞれの特性を理解し、適切に活用することが集客施策の成功につながります。
ここからは、SNS・訪日メディア・インフルエンサーの影響力の活用という視点から、効果的な施策をご紹介します。
台湾でのSNS利用率は高く、特に16歳から64歳の層ではFacebookが90.8%、Instagramが70.6%と広範に利用されています。これらのプラットフォームを活用することで、訪日を考える台湾人に直接、効率的に情報を届けることが可能です。特に台湾ではFacebookの普及率が特に高く、その重要性は無視できません。
これらのプラットフォームを活用した情報発信は、台湾人インバウンド需要への施策として大いに有効であるといえます。
台湾向け訪日メディアの活用は、観光地の魅力を具体的に伝える有効な手段です。訪日メディアの中でも、特に著名なものをご紹介します。
<樂吃購!(ラーチーゴー)>
台湾・香港人向けの訪日観光メディアで、月間250万UUを誇ります。航空券やホテルの予約機能も提供しています。
<歩歩日本(ブーブーニホン)>
2009年設立の訪日旅行情報サイトです。ユーザーの3割が訪日回数10回以上のヘビーリピーターであり、多くの日本愛好家に支持されているメディアです。
<LIVE JAPAN PERFECT GUIDE(ライブジャパンパーフェクトガイド)>
月間436万UUの訪日外国人向け観光情報サービスです。記事2万1千本・動画1,600本を越える豊富なコンテンツを備えています。
これらのメディアの活用は、訪日台湾人への魅力発信と集客施策に効果を発揮するでしょう。
台湾では旅行系のインフルエンサーが約10,000人も存在し、その影響力は見過ごすことはできません。旅行系インフルエンサーが発信する観光スポットや交通手段の情報に、訪日を考える台湾人の多くが関心を寄せています。
訪日台湾人の多くが旅行前にSNSや動画サイトで情報を得ています。これらのプラットフォームで活動するインフルエンサーを活用したインバウンド訴求は、効果的な施策となり得るでしょう。
さらに、個人ブログも非常に大きな影響力を持っています。観光庁の「訪日外国人の消費動向(2019年)」によると訪日台湾人の34%が、出発前に個人ブログの情報を参考にしていると答えています。これは旅行会社ホームページの2倍近くに及ぶ数字です。すなわち、台湾向けインバウンド需要に向けた集客施策として、インフルエンサーやパワーブロガーの影響力を活用することは極めて有効であるといえます。
訪日台湾人の観光客獲得に向け、全国各地の自治体・観光協会が多様な戦略を展開しています。インフルエンサーの活用から大型イベントでのPRまで、様々なアプローチをご紹介します。
香川県観光協会は、SNSで訪日旅行情報を発信する台湾のインフルエンサーを招いて視察ツアーを開催しました。
99万人を超えるフォロワーを持つ台湾人の林氏が、直島や小豆島でのアート作品を視察し、屋島や四国水族館などの観光地を訪問。香川県内の観光地を巡った様子が画像や動画を交えてSNSで発信されました。
岡山県は、SNSで発信力のある台湾のインフルエンサーを招いたモニターツアーを開催。WEBメディアの記者・ブロガー・YouTuberの4人が、3日間に渡って県内の観光スポットや体験型コンテンツを取材しました。
参加者それぞれのSNSやYouTubeチャンネルを通じて、岡山の魅力が発信されました。
この取り組みは、台湾からの訪日旅行者を呼び込み、インバウンド需要の回復に寄与する可能性を秘めているとして注目を集めています。
JNTO(日本政府観光局)は、台湾最大級の観光イベントTTE台北旅展でブースを出展し、岩手県の観光PRを実施しました。このPR活動は、オプショナルツアー予約サイトKKdayの協力を得て実現したものです。
このイベントでは、岩手県南部に位置する世界遺産の町「平泉町」、景勝地の猊鼻渓がある「一関市」が紹介されました。現地の方々がこれら地域を今後の旅行計画に加えるきっかけ作りを目指したものです。
2023年5月に、マイクロアドは台湾からの訪日観光客向けのプロモーションサービス「インバウンドでまちあげ」をリリースしました。台湾向け訪日インバウンド施策の成功に役立つサービス内容について、詳しく解説します。
「インバウンドでまちあげ」は、地方自治体の観光誘致をトータルにサポートするプロモーションサービスです。
このサービスは、訪日観光客に対する誘致プロモーションから訪日後の効果測定、レポーティングまでを包括的に提供します。
これまで提供してきた、地方自治体に特化したマーケティングプロダクト「まちあげ」の特徴は、Web上の行動履歴や位置情報データを分析し、自治体の実施する観光誘致プロモーションに対して、より親和性の高い層を捉えることができる点です。
それゆえ、最適化された広告配信をおこなうことが可能で、費用対効果が高いサービスです。
マイクロアドの台湾現地法人「マイクロアド台湾」と「まちあげ」の連携により、新たに開始された、自治体における台湾人観光客向けの誘致プロモーションサービスが「インバウンドでまちあげ」です。
「インバウンドでまちあげ」のの特徴は、マイクロアド台湾が運営する、台湾・香港女性向けメディア「Japaholic(月間250万PV)」を活用している点です。
Japaholicを活用し、訪日観光客向けのタイアップ企画などのプロモーション支援をおこないます。
さらに、自治体のSNS公式アカウントの運用のほか、「Japaholic」を中心に自治体の魅力や特産品、グルメ情報などの観光コンテンツを展開します。
「インバウンドでまちあげ」の強みは、広告プロモーションだけではありません。
Japaholicの記事に接触したユーザーの分析や、位置情報データを活用した県・市区単位での来訪計測が可能です。また、各自治体における観光客の想定消費額を分析したレポートを提供するデータ駆動型のアプローチも提供します。
これにより、プロモーションの費用対効果の可視化に成功しました。ぜひ、台湾向け訪日インバウンド施策に「インバウンドでまちあげ」をご活用ください。
台湾向け訪日インバウンド施策の一例として、台湾人観光客を惹きつけるための様々な手法やアプローチを紹介しました。
台湾からの訪日観光客は、文化や歴史・グルメ・ショッピングなど、日本の様々な魅力を楽しむことを求めています。
SNSやインフルエンサーマーケティング、そして「インバウンドでまちあげ」を活用し、自治体の魅力を効果的にプロモーションしましょう。