昨今、テレビ離れが深刻化しているといわれています。
特に、YouTubeやVODといった動画コンテンツにその座を奪われているといわれ、中にはテレビを持っていない人も増えています。
ただし、まだまだテレビが持つ影響力は大きく、トレンドを作ることも多いです。
それゆえ、マーケティングの観点でも、テレビCMとWeb広告との相乗効果を図ることが重要となります。
テレビを用いたマーケティングでは、視聴データをいかに活用してターゲティングできるかが重要です。
では、視聴データをどのように活用してターゲティングすればよいのでしょうか。
この記事では、テレビの視聴データの活用方法について解説します。
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テレビの視聴データとは、インターネット接続機能を利用したテレビ受信機において、番組の視聴状況が分かるデータのことです。テレビ視聴データの調査方法として、主に以下の2つがあります。
パネル調査型データとは、調査するエリアを設定した上でサンプリング手法でターゲットとなる家庭を選定し、調査モニターを依頼します。
そして、モニターを受託された家庭に調査機器を設置し、その機器でデータを採取します。
パネル調査型データの場合、個人単位での視聴実態を把握できる点が大きなメリットです。また、調査対象個人のプロファイリング情報も適切に収集でき、性別や年齢以外にも趣味や嗜好など含めた視聴データも得られます。
パネル視聴型データのデメリットは、専用の機器を設置する必要があるため、サンプルサイズが少なく調査エリアが限定される点です。
パネル調査型データは、古くからおこなわれてきたデータ収集方法ですが、技術の進歩によって徐々に実数型データにシェアを奪われています。
実数型データとは、インターネットに接続したテレビ機器や録画機を対象として、マーケティング利用許諾を得たデータを収集する方法です。
具体的な収集方法は、視聴データを取得している局や番組にチャンネルを合わせると、 画面には表示されないデータ放送画面(透明スクリーン)が起動します。そして、番組視聴中は、一定間隔毎に視聴データが送信される仕組みです。
実数型データのメリットとして、サンプル数を大きく確保できる点が挙げられます。
対象として、全国を網羅可能であり、得られたデータから各エリア別に細かなデータ分析が可能です。
一方で、実数型データの場合は機器単位のデータしか収集できないため、家族が同じテレビで視聴していると、誰が視聴したデータなのかを判別できません。また、プロファイリング情報がほとんどなく、人単位でデータを取得することはほぼ不可能です。
テレビの視聴データを活かしたターゲティングを実践する場合、どのようなデータを得られるかを把握しておかなければなりません。
必要とするデータを取得できなければ、視聴データからターゲティングしても意味がありません。
テレビの視聴データで得られる情報としては、以下が挙げられます。
視聴履歴とは、”特定の個人を識別できる形” で ”特定の日時に視聴する放送番組” を特定できる情報を指します。
その際、視聴した放送の受信の契約者が識別できればよいとされています。契約者の家族のうち誰が実際に視聴したのかが特定される必要はありません。
視聴履歴は個人情報となるため、収集する側としては適切に取り扱わなければならない情報です。
非特定視聴履歴とは、”特定の個人を識別できない形” で ”特定の日時において視聴する放送番組” を特定できる情報を指します。各テレビ局が収集しているデータであり、例えば読売テレビでは以下のようなデータを収集しています。
非特定視聴履歴に関して、同じ社内の別のデータベースに保存された特定の個人を識別できる情報と容易に紐付けできる場合、個人情報として取り扱われる点は注意が必要です。
※出典:総務省 視聴データの現状(https://www.soumu.go.jp/
テレビの視聴データを取得することで、様々な分野での活用が期待できます。
ただデータを収集するだけでなく、データと購買情報や閲覧情報、そして位置情報などを組み合わせて使用する形となります。
テレビの視聴データを活用することで期待されることは、具体的には以下のとおりです。
広告によるマーケティング効果を得たい場合、ターゲティング広告配信は欠かせません。
そこで、地上波テレビ番組の視聴傾向やテレビCMの接触頻度などの実視聴データを活用して、ユーザーの特徴に合わせた広告を配信しているケースが増えています。
従来のインターネットに接続されたテレビからは、性別や年代、興味関心などの項目でのみターゲティングしていました。今では、一歩進んで実視聴データをベースとした、よりセグメントを絞ったターゲティング配信をおこなえるサービスも増えています。
地上波デジタル放送のスタートにより、テレビでデータ放送を容易に利用できるようになりました。この機能とテレビ視聴データを活用して、番組と連動した特典やクーポンの配布による集客数向上を狙った動きも多く見られます。
例えば、TOKYO MXでは「得だね!Shufoo!」のサービス紹介のスポットCMが放映されていました。このCMから番組視聴を誘導して、番組と連動したデータ放送内で、タイムセールやクーポン割引などのお買い得情報を提示する、といった手法があります。
これにより、視聴者としては欲しいものをお得に購入することができます。また、広告提供側としても、来客数や会員獲得数を増やせるメリットがあります。
観光関連業界との連携による地域振興の促進も、テレビ視聴データの活用が進んでいるジャンルの1つです。
2017年には、CBCテレビと中部日本放送が、各分野の企業とタイアップして、テレビ視聴データから得られる視聴者行動データを活用した実証事件を実施しました。
テレビ放送で旅番組を放送して、放送後にスマートフォン向けに番組内容の追体験行動につながりやすいサービスを提供しました。これにより、観光地への送客を促進しています。
IoTデバイスとテレビ視聴データを組み合わせる方法も、多く見られます。
例えば、ユーザーが料理番組を視聴した際に、IoTデバイスであるスマートフォンに料理レシピの無料配信をおこなう事が可能です。
実際に、テレビ視聴データをターゲティング広告配信に活かす場合、どのようにマーケティング施策を実践するかがポイントです。ここでは、マーケティングへの具体的な活用例を紹介します。
従来のパネル調査型データでは、テレビの視聴率を試算するのに1ヶ月程時間がかかります。より正確なデータを取得するのには最適な反面、スピーディーにデータ分析できないのが弱点です。
その点、実数型データの場合はテレビCMの接触状況を数日程度でモニタリング可能です。これにより、視聴割合の算出までにかかる時間を大きく短縮することに成功しました。より短いスパンでテレビCM出稿の分析から改善までつなげることができるので、必要に応じて出稿配分のコントロールが可能になりました。
3rd Party Cookieとは、人ではなく、ユーザーが閲覧する同一のブラウザを追跡するための仕組みです。
Webサイトを運営する側やインターネット広告配信業者などが、ユーザーのアクセス履歴を取得するために使用しています。
例えば、あるユーザーがショッピングサイトで特定の商品を閲覧します。
後日そのユーザーが同じサイトにアクセスした際に、類似商品を表示させるためにCookieが使用される形です。しかし、ユーザーのプライバシー保護の観点から、これまでインターネット広告配信で広く活用されてきた、3rd Party Cookieの利用に対する規制が世界的に広まっています。
現在は、インターネットに対応したTVが接続されているルーターから、IPアドレス情報を取得して、同一のルーターに接続している機器(ユーザー)をIPアドレスで判別して、Cookieを利用して広告配信・分析をおこなう方法が主流です。
※IPアドレス情報の取得は、ユーザー同意を得ているものに限る
Web広告を表示させる際、性別や年代などの属性でターゲティングがおこなわれます。
例えば、「洗剤」は既婚の子どもがいる女性がメインターゲットとされやすいですが、それ以外の方も購入する商品です。性別や子どもの有無に関わらず、洗剤を購入する機会が多いユーザーをターゲット設定できれば、より的確な訴求が可能です。
洗剤のWeb広告を配信する際に、テレビ視聴データを活用することで、ファミリー向けの番組や洗剤のCMの視聴回数が多いユーザーに限定したアプローチができます。
テレビを頻繁に視聴しているのか、または短時間しか視聴していないのかによって、アプローチが異なります。視聴時間による層別として、以下のような分類を用いています。
サイバーエージェントがおこなった分析によれば、ローテレ層はYouTubeの利用率が高く、ハイテレ層はYahoo! JAPANの利用率が高いなどの傾向があります。このデータからもハイテレ層、ローテレ層それぞれに対する効果的なアプローチ方法が異なることを理解しておきましょう。
テレビ視聴データを容易に取得できるようなサービスが増えている中で、テレビ業界自体が今後どのように変化していくかを把握することも重要です。特に、テレビ離れが進んでいると言われている中で、影響力が低下するのであれば、マーケティングにおける活用方法を検討しなければなりません。
テレビ業界では、主な収入源として広告収入が挙げられます。ただし、インターネットの普及やスマートフォンの登場によって、テレビ離れが深刻化しているのが現状です。
テレビの視聴時間が減少することにより、広告収益も減少しています。年齢層で見ると、高齢層の視聴時間には変化がなく、10代及び20代の視聴時間が顕著に減少しています。
広告収入を増やすためには、これ以上のテレビ離れを防止すると同時に、新しい試みによって新たな層を開拓する動きが必要です。
※出典:総務省 第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
インターネットを活用した、動画や番組の配信チャネルの拡大が活発になってきている中で、マーケティングにおいては「Tver」の注目度が高まっています。
TVerとは、スマートフォンやタブレット、PCなどで民放テレビ局が提供するテレビ番組や動画コンテンツを視聴できるサービスです。見逃し配信サービスなども提供しており、今までテレビでしか視聴できなかったコンテンツを、時間を気にせず視聴することができます。
TVerのように、今までテレビでしか見られなかったコンテンツをインターネット上で視聴できるサービスが増加しています。媒体社のプラットフォームであるため、どの枠にどのようなCMを入れるのが最適かなどを判断できるのが特徴です。
配信チャネルの拡大は、今後のテレビ業界においてますます活発になっていくでしょう。
最近では、YouTuberが魅力的な動画を公開して、多くの視聴者を獲得しています。ただし多くの動画は、まだまだテレビ番組のような企画力や映像制作技術を伴っていないのが実情です。
コンテンツ制作力により磨きをかけて、ストロングポイントにできれば、テレビ業界はまた違った発展を遂げる可能性があります。特に、インターネットを活用してより幅広い層に魅力をアピールできれば、新たなファン獲得につなげられるでしょう。
昨今、様々なテレビ視聴データを活用したサービスが誕生しています。マイクロアドでも、2023年1月に「UNIVERSE TV-Audience Targeting」と呼ばれるサービスを開始しました。
ここでは、「UNIVERSE TV-Audience Targeting」の詳細について解説します。
「UNIVERSE TV-Audience Targeting」は、テレビ視聴ログを活用して、マーケティング効率の改善を実現するサービスです。国内主要TVメーカーが保有している、利用者から同意を得た上で取得するコネクテッドテレビ(※)の視聴データを活用した、広告配信が可能です。
※コネクテッドテレビ(以下、CTV):インターネット回線に接続されたテレビ端末
配信の仕組みとしては、インターネットに対応しているテレビが接続されているルーターから、IPアドレス情報を取得します。その後、同一ルーターに接続している機器やユーザーをIPアドレスで判別して、Cookieを利用して広告配信や分析をおこないます。
「UNIVERSE TV-Audience Targeting」の特徴は、自社SSPを中心として広告在庫数が2,000億/月を超える、日本最大級の配信先を保有している点です。多岐にわたるフォーマットへの対応と配信在庫に特徴のあるSSPを、厳選して接続可能です。
ユーザーの同意を得た上で、CTV視聴データを活用して特定のテレビ番組やCMを視聴したユーザーをターゲットに、インターネットメディア上で広告配信が可能となります。これによって、テレビCMとの相乗効果が見込める特徴があります。
TVCM視聴ユーザーとのタッチポイントを増やし、 TV視聴時間が短い傾向にある若年層へのリーチ補完が可能です。 TV視聴コンテンツ傾向を活用した、多彩なターゲティングにも活用できる点が、「UNIVERSE TV-Audience Targeting」の大きな強みです。
テレビの視聴データを用いたターゲティングは、特にインターネットに接続できるテレビが普及している中で、積極的に実践されています。
まだまだ課題があり、テレビ離れが深刻化している中で、広告の効果自体をより考えた広告出稿が必要です。
「UNIVERSE TV-Audience Targeting」のようなツールを活用して、より高い効果が得られる広告を出稿する準備を進めましょう。