日本は少子高齢化が進み、総人口は2008年をピークに減少し続けています。国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、日本の総人口は50年後には現時点の約7割に減少し、65歳以上の人口は約4割を占めるといわれている状況です(※1)。
「自治体戦略2040年構想研究会」によると、生産年齢人口の大幅減少にともなう職員の採用難を考慮すれば、2040年には自治体の職員が半減する可能性があります(※2)。
すなわち、半数の職員で行政を運営することを想定しなければなりません。社会環境の変化の中で、自治体のサービスを維持していくためには、デジタルの活用及び推進が必要です。
自治体では、デジタルを活用し業務の効率化を図るためにAIチャットボットを導入している地域が増えてきました。今回はその中でも、LINEチャットボットの活用が広がっている背景をご説明します。
また、LINEチャットボットを導入するメリットやデメリットと活用事例も併せてご紹介します。
最後に、LINEチャットボットツール「conel(コネル)」について解説しますので、これからチャットボット導入を検討しているご担当者は最後までご覧ください。
(※1)国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(令和5年推計)」結果の概要を公表します
(※2)自治体戦略2040年構想研究会 第一次・第二次報告の概要
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全国各地で人口減少による過疎化が進み、公共サービスの存続にも影響を及ぼす自治体も増え始めています。行政サービスの継続し維持していくために、自治体ではAIやRPAといったデジタル技術の活用を推進しています。
RPAとはこれまで人間しか対応できないとされていた作業を、AIが代わりに実施できるようにする取り組みです。ここでは、自治体でAIの活用が広がる背景を4つの視点で解説します。
人口減少社会において、今後、自治体職員も減少していくことが予想されます。生産活動を中心となって支える15〜64歳の人口が減少するため、職員の採用と人数の確保が難しくなるでしょう。
現状の職員数より少ない人数で行政サービスの質を保ち運営していくにはデジタル技術の活用と推進が欠かせません。
総務省は、自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】を策定し、AIをはじめとしたデジタルの活用を推進しています。それによると、自治体がDXを進めるために取り組むべき事項として次の6つが示されています。
自治体は、デジタル技術やAIを活用して行政サービスの業務効率化を図り、住民の利便性を向上させることを求められています。令和3年5月にデジタル社会の実現を目指すための6つの法律「デジタル改革関連法」が施行されました(※3)。
さらに、令和5年6月には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定され、デジタルを活用していく社会を作るために「デジタル田園都市国家構想」が策定されました。
デジタル田園都市国家構想では、デジタル技術の活用は次の2つの意義があると示しています。1つ目は、地方が抱える人口減少や少子高齢化、産業空洞化などの社会課題を解決に導くこと。2つ目は、魅力向上のブレークスルーを実現し、地方活性化を加速することです。
(※3)厚生労働省 デジタル改革関連法の全体像
DX推進やAI導入を推進するために、政府は補助金を用意しています。AI導入で活用できる補助金は次のとおりです。
IT導入補助金は、経営課題を解決するためにITツールを導入するための補助金です。中小企業と小規模事業者が補助事業者となります。IT補助金は次の4種類に分類されます。
補助金枠の種類 |
概要 |
通常枠(A・B類型) |
・業務のデジタル化を目的としたITツールの導入 ・A類型 5万円以上~150万円未満 ・B類型 150万円以上~450万円以下 |
・デジタル化基盤導入類型 ・複数社連携IT導入類型 |
・導入ソフトは会計・受発注・決済・ECソフトに特化 ・複数社連携IT導入類型の場合、補助対象が「消費動向等分析経費」と「参画事業者の取りまとめに係る事務費・専門家費」まで拡大される |
セキュリティ対策推進枠 |
サイバー攻撃を防止するセキュリティ対策の支援 |
商流一括インボイス対応類型 |
インボイス制度の導入にあたってのITツール導入支援 |
ものづくり補助金は、事業内容により次の5種類に分類されます。
AIやDX推進はデジタル枠となり、DXに寄与する製品やサービスの開発および導入に対して補助金が交付されます。
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業が、事業再構築に挑戦するための取り組みに交付される補助金です。AIシステムの導入に対しても活用することができます。
総務省が自治体に向けてAI導入やDXを推進しているため、民間企業が有するアイデアの提案も増えています。それを受けて、各自治体でボイスボットやチャットボットなどのボットだけでなく、農業やインフラ、教育や医療・介護など幅広い分野でAIの導入が進んでいます。
本章では、自治体におけるAIの導入状況と、活用されているAI機能の例をご紹介します。これからチャットボットを含めてAIの導入を検討している方は、参考にしてください。
総務省が実施している「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」によると、AIの導入済み団体数は、都道府県・指定都市で100%。実証中、導入予定、導入検討中を含めると約69%がAIの導入に向けて取り組んでいます。
RPAの導入済み団体数は、都道府県が94%、指定都市が100%。こちらも実証中、導入予定、導入検討中を含めると約67%が導入に向けて取り組んでいると回答しています。AI・RPA共に年々、導入している自治体は増えています(※4)。
画像データに含まれるテキスト部分を認識し、文字データに変換する仕組みをOCR(光学文字認識)といいます。自治体の各申請書は、手書きで記載して提出されることが多いのが現状です。
それぞれの申請書をスキャナーで読み込んで、記載された文字を認識してデジタル化することにより、手続きを簡素化できます。
AI-OCRとは、OCR(Optical Character Recognition/光学文字認識)に、AI(人工知能)技術を融合させた最先端のOCR技術のことです。AI-OCRの導入により、年間11,663時間、約98.15%の業務時間の削減に成功した自治体の事例も見受けられます(※5)。
AIを活用した画像や動画認識機能を活用し、道路の損傷を検出するなど、固定資産調査、歩行者や自転車の通行量調査などに使用する事例も報告されています。
北海道室蘭市は、室蘭工業大学と共同で研究をおこない、安価な車載カメラでAI技術を活用して路面画像からひび割れを自動検出する機能を開発(※6)。
AI技術の活用によって、ひび割れ率を検出し、ランク別に色分けしてマッピングすることができるようになりました。これにより、道路管理の効率化・省力化を実現しました。
自治体におけるAI技術の活用例として挙げられるのは、AIチャットボットでの情報提供です。自治体の業務改善と住民の利便性向上の両面から活用されています。AIチャットボットを活用した業務改善の事例として、以下の2つが挙げられます。
AIチャットボットの導入後、問い合わせ件数も増加しており、土日祝日も対応できるため住民の利便性向上にも寄与しているといえます。
(※4,5)総務省 自治体におけるAI・RPA活用促進
(※6)総務省 地方自治体におけるAI・ロボティクスの活用事例
自治体がAIチャットボットを導入するにあたって、以下のような注意点があります。
それぞれについて、解説します。
AIチャットポットの運用にあたって、サポートしてくれる代理店を検討しなければなりません。自治体職員は担当者の人数も少ないため、簡単で手間のかからないシステムにする必要があります。複雑な機能が付いていても運用するのに時間を要してしまっては、業務効率化につながりません。
民間企業から提案を受けてAIチャットボットを導入する際の注意点として、ほかの自治体での導入実績も重要なポイントです。自治体と民間企業ではチャットボットの運用方法も異なります。自治体での導入実績のあるAIチャットポットを選択しましょう。
自治体がチャットボットを導入する際、LINEを活用している事例が増えています。本章では、自治体がLINEチャットポットを活用するメリットを解説します。
自治体は「地方公共団体プラン」を利用できます。このプランは、月額費用0円でメッセージ通数も無制限で送信可能です。災害時など、メッセージを大量に配信する場合でも利用料がかからないのがメリットといえます。
アカウントの名称が「地⽅公共団体名」になっているなど、申し込み基準をクリアした地方公共団体が申し込みできます。
自治体が住民に向けて発信する情報には、災害情報など緊急性が高く即時性と正確性が必要なものも含まれます。
LINEを活用すると、文字だけでなく様々な情報を配信できるため、避難情報や避難所の情報を素早く伝えられるでしょう。住民にとっても、正確な情報をリアルタイムで得られるためメリットが高いといえます。
LINEは普段から利用している方が多いため、拡散力が高いのもメリットです。メールソフトを起動して文章を確認しなければならないメールより、LINEで簡潔な内容をチェックする方が操作も簡単です。
自治体の受付窓口は、一般的に平日の午前中から夕方までと時間が限定されます。LINEのチャットボットで自動応答することにより、業務時間が終了した後や土日祝日の対応も可能です。
LINEチャットボットは、自治体の受付窓口としても活用できます。問合せを受付できる時間が増えるため、住民の利便性が高まります。
運用が容易で自治体での導入実績も豊富なため、LINEチャットボットを活用する自治体も増加しています。ここからは、自治体におけるLINEチャットボットの活用事例を4つご紹介します。
福岡県福岡市の公式LINEアカウントは、友達登録数は2023年1月時点で、183万人を超える方が利用しているアカウントです(※7)。生活情報・防災情報・損傷報告・受信情報の暮らしに役立つ4つの便利な機能を完備しています。
ゴミの分別方法を調べたり、災害に備えた避難場所の確認、道路や公園で見つけた不具合の報告をLINEでおこなうことができます。また、自分にとって必要な情報のみを受信できるような設定も可能です。
※7)福岡市 【183万人】LINE Fukuoka_福岡市アカウント使い方ガイドfix
神奈川県海老名市の公式LINEアカウントは、行政の問い合わせ窓口として活用されています。役所に来庁せずとも申請などの手続きがおこなえます。LINEで申請できる主なサービス内容は次のとおりです。
そのほか、集団がん検診の予約や道路の異常報告などもできます。各種申請の手続きをLINEでおこなえるので、問い合わせ件数の削減や回答時間の短縮などの効果が出ています。
栃木県宇都宮市の公式LINEアカウントは、AI自動応答サービス「教えてミヤリー」の提供を開始しました。子育てや住まいに関する身近な問い合わせに対して、LINEで24時間回答します。問い合わせ対応が可能な分野は次のとおりです。
子ども・子育ての分野では、婚姻や妊娠・出産に関連する問い合わせに対応しています。さらに予防接種や子育て相談についてもAIが応答します。そのほか家庭ごみの分別についての問い合わせや、水道・下水道などの住まいに関する相談にも時間を問わず応答がもらえるので便利です。
千葉県市川市の公式LINEアカウントは、住民票の申請がLINEアプリ上で完結するので便利です。災害情報や天候状況、道路や河川の状況も把握できます。ハザードマップも確認でき、知りたい内容を質問するとAIが回答してくれます。
そのほか、ライフイベントに関連する手続きを案内してもらえるサービスも利用可能です。
LINEのチャットボット機能を活用し、自治体は様々な課題の解決に取り組んでいます。本章では、広告配信と連携して利用できるLINEチャットボットツール「conel」をご紹介します。
「conel」は、株式会社coryが提供しているLINEを活用したチャットボット型の広告配信システムです。「conel」で実現できるサービスについて解説します。
マイクロアドが提供するマーケティングデータプラットフォーム「UNIVERSE」に蓄積された消費行動のデータを用いて、広告配信を実施できます。「UNIVERSE」と「conel」が連携することで、双方のデータを活用したサービス案内などが可能になります。
「conel」には、自治体が運営するWebサイトから、ユーザーが離脱するタイミングでポップアップを表示する機能が備わっています。ポップアップからLINEアカウントに誘導して、チャットボットが対応します。
人口減少や高齢化の影響を受けて、政府は様々な補助金を用意しデジタル技術の活用を働きかけています。
業務効率化や住民へのサポート強化を目的として、約69%の自治体がAIの導入に向けて取り組んでいます。自治体におけるAI技術の活用例として挙げられるのは、AIチャットボットでの情報提供です。
中でも、手軽に運用ができるLINEを活用している事例が増えています。LINEチャットボットには自治体専用のプランがあり、メッセージを無制限に配信できることが魅力です。
住民にLINEの友だち登録をしてもらうことで、緊急時に情報が拡散しやすいメリットもあります。
記事の後半ではLINEチャットボットツール「conel」のサービスもご紹介しています。LINEチャットボットサービスの導入を検討している担当者は、ぜひ「conel」の導入をご検討ください。