「九州における訪日インバウンドを促したいが、どのように魅力的な要素をアピールしたらよいかわからない」このような代理店や自治体担当者の方もいらっしゃるでしょう。また、九州が持つ独自の地域性や、状況に合わせた戦略的なアプローチ方法を知るためのきっかけを掴みたいと考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、九州における訪日外国人旅行者の現状と動向をご紹介しています。また、インバウンド誘客の課題や観光客のニーズに応える取り組みをおこなっている観光地についても詳しく解説しています。
MICEとは何かや、MICEを実施することで得られる効果についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
日本政府主催の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」や、2013年以降の円安傾向の影響で、訪日外国人旅行者数は右肩上がりで増加を続けていました。九州でも同じように訪日外国人旅行者数は増加傾向にありましたが、2020年以降は新型コロナウイルスの影響で旅行者は激減します。
その後、訪日入国規制の撤廃や円安の進行などにより、九州の訪日外国人旅行者数が急速に回復しました。2023年6月における九州への訪日外国人旅行者数は244,776人にのぼります。これは2019年同月の約82%にあたる数字で、回復傾向が顕著です(※1)。
※1)国土交通省九州運輸局 九州への外国人入国者の推移について(2023年7月24日)
九州におけるインバウンド誘客を成功に導くためには、九州を訪れる外国人旅行者の特性やインバウンド誘客の課題を正しく理解する必要があります。
それぞれについて、詳しく解説します。
九州は、豊かな自然や独自の食文化、歴史、そして泉質のよい温泉などに恵まれた地域です。魅力的な観光スポットがたくさんあるにもかかわらず、東京・大阪(近畿)や北海道などのゴールデンルートと比べ、訪日外国人旅行者の認知度が低い状況です。
特に、アジア以外の国々(欧米諸国やオーストラリア)では、その認知度は高くはありません。日本政策投資銀行の調査によると、訪日希望者の九州の認知度は全体で27%、欧米とオーストラリアの認知度は6%(※2)にとどまります。
その一方、訪日回数が増えるにつれ九州への認知度・訪問意向が高まることも調査結果として出ています。(※3)したがって、認知度の向上はもちろん、いかにして九州への訪問意向につなげるかが重要です。
訪日外国人旅行者の滞在日数をみると、九州は全国平均と比べ「3日以内」の短期滞在者が多いことがわかります(※4)。それゆえ、欧米や豪州などからの長期滞在を希望する訪日外国人旅行者の獲得余地が大きいといえるでしょう。
一般的に、長期滞在者は多くの観光地を巡り、地元の商品やサービスを利用します。長期滞在者が増加すれば、地域経済に多くの利益をもたらすことが期待できるでしょう。
アフターコロナで旅行や観光業の需要が急激に回復しています。しかしながら、観光業は新型コロナの感染拡大時期に営業時間の短縮や休業を余儀なくされ、そこから従業員数が戻り切ってないのが実情です。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023 年 7 月)」によると、正社員の人手不足企業の割合が旅館・ホテル業では72.6%にのぼります。
さらに、非正社員の人手不足割合企業の割合は飲食店が83.5%、旅館・ホテル業が68.1%と、観光関連の企業の人手不足は深刻です。
例えば、あるホテルでは従業員の不足から、客室の稼働率を約7割に抑えて営業を行うなど、高まる需要を取り込めていないケースが散見されます。
※2,4)日本銀行福岡支店 九州・沖縄におけるインバウンド(訪日外国人)の現状について
※3)日本政策投資銀行 訪日外国人旅行者の意向調査からみえるコロナ後の九州インバウンド観光戦略②
訪日外国人旅行者がどのようなニーズを持ち、何を期待しているかを知ることは、その地域を訪れる旅行者の満足度向上に欠かせません。
ここでは、九州でおこなっている訪日外国人旅行者のニーズに応える取り組みを、実際の事例とともにご紹介します。
国内外から多くの旅行者が訪れる太宰府市は、「参道をぶらりと歩き参拝して帰る」といった通過型の観光が主流です。
コロナ前の2019年の年間観光客数は818万人、コロナ渦の2020年においても233万人が太宰府市を訪れています。しかしながら、福岡市の中心部から約30分という利便性の高さもあり、大半が日帰り観光客です。
太宰府市によると、宿泊客数は観光客全体の約0.5%に過ぎず、立ち寄り客(日帰り客)1人当たりの観光消費額(推計額)は宿泊客の4割以下です(※5)。
その結果、市内での消費単価の上昇につながらないことが課題となっていました。
そうした中、2019年10月に門前町の古民家をリノベーションした「ホテルカルティア大宰府」が開業しました。この宿泊施設は、まちに点在する歴史的建造物を利用した、全5棟からなる分散型のホテルです。
当時の外観を保ち、内装もそのまま残すことで、歴史を随所に感じられるようリノベートされています。訪日外国人旅行者を最高のおもてなしで迎えられる施設です。
※5)日本政策投資銀行 訪日外国人旅行者の意向調査からみえる コロナ後の九州インバウンド観光戦略②
黒川温泉は、熊本県の山間に位置する景観と趣のある温泉街で、統一された美しい景色を楽しめるのが特徴です。宿が川沿いの徒歩で簡単に周遊できる範囲に密集しており、温泉街全体がまるで1つの大きな旅館であるかのような雰囲気が漂っています。
2009年版のミシュランガイド・ジャポンで2つ星の評価を獲得したほか、グッドデザイン賞特別賞、第1回アジア都市景観賞など数多くの賞を受賞しています。
黒川温泉の理念は、自らの宿だけでなく「黒川温泉郷全体を盛り上げる」「魅力を発信する」という考え方です。PRの一環として、公式WebサイトやSNS(インスタグラム、フェイスブック、ピンタレスト)を通じて情報を発信しています。
また、サイクリングツアーや朝ピクニックなどの体験型コンテンツも充実しており、海外からの長期滞在客をターゲットにした取り組みもおこなっています。
宮崎県随一の観光地である高千穂は、年間約140万人(※6)が訪れる一大観光地です。
高千穂では、8月と11月が観光の繁忙期、12〜2月が閑散期となっており、観光需要に偏りがあることが長年の課題でした。ほかにも、雨天時に提供できるコンテンツの不足や、地域特有のお土産品がないことなども課題として挙げられていました。
そこで、こうした課題を整理し、持続可能な観光地域づくりに向けたブランディングに取り組んでいます。その一環として、登山ガイドの充実や自転車を活用した観光などの新たな観光資源の創出を目指し「高千穂アドベンチャーツーリズム協議会」を設立しました。
これらの取り組みに加え、高千穂のコアコンテンツである神楽・神話・自然などの価値や魅力をわかりやすく伝えるためのプロモーション活動をおこなっています。
※6)高千穂町 高千穂町観光マスタープラン
「マイナビ ツール・ド・九州2023」とは、2023年10月に開催される国際サイクルロードレースです。街から街へと地域をつなぐ「ステージレース」となっており、福岡から熊本、大分の3県を舞台にレースが繰り広げられ、総距離は約400kmにも及びます。
大会を通じ、九州の美しい雄大な自然や文化を国内外に発信し、近年九州を襲った自然災害からの復興を象徴するようなイベントにするべく準備が進められています。コース沿道の自治体にとっては、国内外から大勢の方が訪れる機会でもあるため、開催地の魅力発信に大きな効果が期待できるでしょう。
また、コース上では数百台のキャラバン隊(仮装車両)やスポンサー企業による観客への試供品配布などの実施が予定されています。選手を待つ間にも、沿道で観戦を楽しむための工夫がなされていることがわかります。
訪日インバウンドの誘客を図るためには、その土地の独自性や利点、強みをしっかりと理解することが重要です。特徴や優位性を活かしたプロモーションを実施すれば、その土地の魅力を十分にアピールできるでしょう。
ここでは、九州における観光資源としての強みをご紹介します。
九州は、福岡県の玄界灘に浮かぶ沖ノ島や鹿児島県の屋久島、長崎県の「明治日本の産業革命遺産」軍艦島など、様々な世界遺産を有します。そのほかにも世界ジオパークに認定された阿蘇や島原半島などがあり、雄大な自然を楽しめるのが魅力です。
また、国内有数の温泉の宝庫としても知られており、別府・湯布院・嬉野・指宿など全国的にも有名な温泉地が多数あります。
これらの点が評価され、2022年都道府県の魅力度ランキングでは、福岡県が7位、長崎県が9位にランクインするなど、常に上位に位置しています。(※7)
※7)ブランド総合研究所 地域ブランド調査2022
九州の強みとしては、「食」が挙げられます。
例えば、農業産出額(畜産)を見ると、九州の複数県で肉類(牛・豚・鶏)の生産額が上位にランクインしています(※8)。そのため、九州では新鮮な牛肉、豚肉、鶏肉を使用した料理を広く楽しむことが可能です。
また、「食事がおいしい都道府県」ランキングで九州の各県が上位にランクインしており、食事文化が高く評価されていることがわかります(※9)。
九州は地域ごとに独自の料理や食材が豊富なため、訪日外国人旅行者に対し多彩な食の体験を提供できるポテンシャルがあります。このような魅力を活かし、「食」に特化した観光プログラムやイベントを提供すれば、多くの訪日外国人旅行者を魅了できるでしょう。
※8)農林水産省 令和3年 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)
※9)ブランド総合研究所 地域ブランドNEWS 食事がおいしい都道府県ランキング大公開!1位は北海道、3位は大阪府、2位は〇〇県!
九州には各県に空港が一つずつあり、国際線も乗り入れています。このような環境は、海外から九州を訪れる観光客にとって非常に魅力的だといえるでしょう。
加えて、「九州新幹線」「西九州新幹線」や在来線などの鉄道や、海路・高速バス網も充実しており、それぞれを利用できるお得な切符も販売されています。
このように、九州は空路・陸路共にアクセス環境が整備されているため、快適な旅行を楽しむための基盤が整っていることも魅力の一つです。
九州には、集客交流が見込まれるビジネスイベント「MICE」の開催が可能な施設が多く存在します。
具体的には、コンベンション施設・ホテルや、ユニークベニューと呼よばれる歴史的建造物・文化施設・公的空間などです。各県の内訳は、福岡県に45箇所、長崎県に31箇所、熊本県に19箇所、大分県に23箇所、宮崎県に26箇所、鹿児島県に22箇所です。(※10)
上述のように、九州には国際線のある空港も多いため、日本でMICEを開催する際の候補地として上がりやすいという強みがあります。
※10)日本政府観光局(JNTO)MICEの誘致開催支援 都市・施設を探す
「MICE(マイス)」とは、ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エキシビション/イベントを総称した用語です。具体的には以下の分野を包括します。
Meeting:企業の会議や研修など(企業会議や大会、研修会などを含む)
Incentive:企業が従業員や代理店などを表彰や研修の目的で旅行に招待すること
Convention:学会や産業団体、政府などが主催する大規模な国際会議
Exhibition/Event:国際見本市、展示会、スポーツ・文化イベントなど
例えば、海外投資家向けの金融セミナーや、企業の役員会議、営業成績の優秀者を表彰する旅行、国際会議、国際的な映画祭やスポーツ大会などもMICEに含まれます。
MICEは、開催地において経済波及効果の向上、ビジネス機会やイノベーションの創出、都市ブランドの強化や競争力の向上などが期待されるイベントです。欧米諸国ではMICE全般を指してビジネスミーティング・ビジネスイベントと呼ばれる場合もあります。
ここでは、MICEがもたらす効果について、以下の2つの観点から解説します。
1つ目の開催地への経済効果に関しては、MICEの開催による、主催者・出展者・参加者などの消費支出によってもたらされます。
具体的な例として、2016年の国際MICEによる経済波及効果は約1兆590億円で、新たに生まれた雇用創出効果は約96,000人分、税収効果は約820億円でした。MICEの外国人参加者1人当たりの平均消費額は約26.1万円であり、これは訪日外国人旅行者1人当たりの平均消費額約15.6万円を大きく上回ります。(※11)
2つ目のビジネスチャンスについては、国際会議やMICEの誘致・開催により、世界中のビジネスパーソンや研究者が日本に集結する点が挙げられます。これにより、新たなビジネスパートナーとの交流やビジネス機会が創出される可能性が高まるでしょう。
例えば、世界的な技術者との共同研究やグローバル企業との連携事業など、国際的なネットワークを構築するきっかけにもなり得ます。
こうした活動が国際会議件数などの世界都市ランキングにも反映され、国際会議の件数などによって都市の競争力が向上します。したがって、MICEの誘致も都市の発展および地域活性化にとって重要な取り組みです。
九州の自治体には、交通インフラや施設が整備されているというアドバンテージがあります。これらの特徴を生かし、訪日外国人旅行者の誘客のみならず、MICEの誘致に関しても積極的なプロモーションを展開すべきだといえるでしょう。
※11)国土交通省 観光庁 MICEの誘致・開催の促進
訪日外国人旅行者に効果的な訴求ができるサービスとして「インバウンドでまちあげ」をご紹介します。
「インバウンドでまちあげ」は、マイクロアドとマイクロアド台湾が連携した、台湾からの訪日観光客の自治体への誘致を支援するプロモーションサービスです。
「インバウンドでまちあげ」を利用すると、自治体のSNS公式アカウントの運用のほか、マイクロアド台湾が運営する、月間250万PVを誇る台湾・香港女性向けメディア「Japaholic(ジャパホリック)」を中心に、自治体の魅力や特産品、グルメ情報などの観光コンテンツを展開することが可能です。
「Japaholic」の記事を見たユーザーの分析や、位置情報データを活用した県・市単位での来訪計測が可能です。この計測に加え、各自治体における観光客の想定消費額を分析したレポートをご提供いたします。
これにより、実施したプロモーションの費用対効果を可視化することで、今後のプロモーションに活かすことができます。
「インバウンドでまちあげ」を利用すれば、訪日外国人旅行者へのより効果的な観光マーケティングを実現できるでしょう。
訪日インバウンドを増加させるためには、地域特有の魅力や強みをしっかりと把握し、それを活かしたPRの実施が重要です。
また、ほかの地域がどのような取り組みをおこなっているかを知ることは、自地域での取り組みを進めていくうえでも効果的な手段だといえます。
訪日インバウンド増加に向けたWebプロモーション実施の際は、ユーザー分析や位置情報データの活用が可能な「インバウンドでまちあげ」の利用もおすすめです。
訪日インバウンド増加を目指す代理店や自治体のご担当者様は、ぜひ本記事を参考にしてください。