多くの自治体でおこなわれている地域イベントは、地域ブランドの形成や住民のコミュニケーション促進、さらには地域経済の活性化に大きな影響を与えています。
一方で、コロナ禍の影響により、イベントのオンライン配信や運営スタッフのオンラインミーティングが一般化するなど、地域イベントの運営と集客に新たな課題と変化が現れました。
これらの急速な変化への対応と同時に、増大する経費負担や資金調達の課題も生じ、対策が求められています。
本記事では、地域イベントの目的や種類、アフターコロナにおける運営の変化からイベントを成功に導くための集客方法に至るまで、包括的に解説します。地域イベントの集客に課題を抱える代理店や自治体のご担当者は、ぜひ参考にしてください。
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地域イベントの集客を成功に導くためには、イベント開催の目的を明確にする必要があります。まずは地域イベントを開催する目的を4つに分類し、具体的なイベントの例と共にみていきましょう。
地域イベントは、多様な層に楽しめる場を提供すると同時に、地域自体の魅力やコミュニティの結束を高める役割を果たしています。
東京都港区新橋の「こいち祭」は、主にサラリーマンが多く集まる場所でありながら、地元の小学生や家族も楽しめるイベントです。ビジネス街の中心で盆踊りや縁日などを実施し、新橋で働く方や地元住民が新しい楽しみを発見できるよう工夫されています。
京都府京都市の上賀茂神社や二条城で開催された、プロジェクションマッピングなどの光のアートイベントは、地元住民だけでなく観光客にも夏の楽しみの場を提供しました。
地域イベントは、過疎化や地域経済の衰退といった課題に対する有効な解決手段としても、積極的に活用されています。
岐阜県可児市では、「戦国城跡巡り事業-可児市の乱-」という体験型イベントをおこない、地域の歴史や文化資源を活用して観光客を呼び込みました。地域の魅力を再発見する機会を創出し、地域活性化と人口増加を目指しています。
長野県阿智村では、「日本一の星空の村」として、豊かな自然環境を生かした星空観賞イベントを開催しています。観光資源として地域の自然美を最大限に活用し、村の人口の25倍に相当する年間16万人もの観光客を呼び込んでいます(※1)。これは、地域イベントが地域経済に新たな活力をもたらしたよい例といえるでしょう。
※1)日本サービス大賞 地方創生大臣賞
地域イベントは、繁忙期だけでなく、閑散期を含む長期的な地域への集客を実現する手段ともなりえます。
例えば、兵庫県の六甲山では、「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」というイベントを、夏休み後から紅葉シーズンが始まるまでの閑散期に開催しています。このような工夫により、1年を通して安定した観光客の訪問を促し、地域の活性化に貢献しました。
また、長野県飯田市の天竜峡では、「天龍峡ナイトミュージアム」というライトアップイベントが閑散期に開催されています。地域の美しい自然環境を活かした新しい魅力を発信し、集客に成功しました。
集客の成功はイベント自体の盛り上がりだけでなく、地域のイメージ向上にも好影響を与えます。それゆえ、イベントの集客は上述の「地域のブランドづくり」「来訪者が楽しめる場の提供」「地域活性化」といった目的の達成のカギになるといえるでしょう。
地域イベントの種類は、祭り・スポーツイベント・音楽フェス・アートイベント・伝統文化や地域産業に触れるイベントなど、多岐にわたります。イベントの内容や活用空間ごとに地域イベントの種類を分類しました。
地域イベントは、その内容によって以下のように分類できます。
それぞれの特徴をみていきましょう。
2.11 テーマパーク型イベント
テーマパーク型イベントは、総合型のエンターテイメントを提供するのが特徴です。複数のブースやステージを展開することで、一度に多くの来場者を楽しませることができます。ステージ毎にタイムテーブルが組まれる場合も多く、観客は音楽やダンス、子ども向けのショーなど様々なパフォーマンスが楽しめます。
具体的には、フェスタやマルシェなどがこの形態に該当します。幅広い年齢層に訴求できるため集客力が高く、地域経済に与える影響も大きいといえるでしょう。
2.12 テーマ型イベント
テーマ型イベントは、特定の企画やテーマに特化したイベントです。花火大会やアートフェスなどがこれに該当します。このタイプのイベントは、ターゲットが明確であるため、テーマに興味を持つ特定の層に対して効果的に訴求できます。
2.13 地域コミュニティ型イベント
地域コミュニティ型イベントは、地域固有の文化や伝統を中心としたイベントで、主に地域住民の交流や親交が目的です。地域の祭りや盆踊りといった小規模なものから全国的に有名なお祭りもこれに含まれます。
例えば、「青森ねぶた祭」や京都の「祇園祭」は、地域に愛される歴史ある伝統行事で、地域住民間での交流や親交を深める場として重要な役割を果たしています。一方、その規模やオリジナリティから、国内外からも多くの観光客を集客しており、地域経済にも貢献しているよい例です。
さらに近年では、高額のプレミアム観覧席を設けるなど付加価値を高める工夫がされ、イベントに新しい付加価値を提供する施策として注目されています。
地域イベントは、町の様々な空間を活用して実施され、地域住民や観光客に地域の魅力を伝える役割を担っています。
ここからは、道路空間・河川空間・公園空間を活用したイベントについて、それぞれ説明します。
2.21 道路空間の活用
道路空間を活用した地域イベントは、通常は交通のために使用される道路を一時的に「人中心の空間」に変え、まちなかのにぎわい創出に貢献しています。ストリートパフォーマンスやフードトラックで出店するイベントなど、イベントの形態は様々です。
これらのイベントは「道路占用許可の特例制度」を活用し、地域のまちづくり団体と行政が連携して実施されています。地域の商業活動に新たな集客チャンスを提供し、地域住民には交流の場として、また新しい楽しみ方を発見する機会をもたらしています。
2.22 河川空間の活用
河川空間を活用した花火大会やスポーツイベント、自然を体感する地域イベントなどは、地域のにぎわいを生み出すまちづくりの手法の一つです。
民間事業者が「河川敷地占用許可制度」を活用して、イベントを実施することにより地域活性化を図る事例も見受けられます。河川空間が持つ魅力を最大限に活用し、地域コミュニティの結束を高める役割も期待されます。
2.23 公園空間の活用
近年、都市公園法の改正(※2)や「都市公園占用許可特例制度」を利用して、公園空間を活用したイベント活動が展開されています。
例えば、大阪府大阪市の天王寺公園のエントランスエリアでは、公園内の芝生広場を中心に、子どもの遊び場やカフェ、フットサルコートなど多様な施設が運営されています。これらの施設は市から委託を受けた民間業者が再整備したものです。地域住民に新しい交流の場やレクリエーションの機会を提供するだけでなく、観光資源としても地域の魅力を高めています。
※2)国土交通省 都市公園法改正のポイント
コロナ禍を経て、地域イベントの運営と資金調達において変化が訪れました。デジタル技術の活用と新しい資金調達手法が、イベントの多様性と魅力、そして持続可能性を高める新たな要素となっています。
ここからは、アフターコロナの地域イベント事情について、詳しく解説します。
新型コロナウィルスの5類移行にともない、インバウンド需要が急速に回復しています。これにより、これまで制限の多かったリアルイベントへの需要も高まっています。
特に注目すべきは、高額な特別席が設定される事例が増えてきた点です。100万円のVIPシートや数十万円のプレミアム観覧席が高い確率で完売しており、その収益は地域経済の活性化やイベントの持続に大いに貢献しています。
また、コロナ禍を経て多くのイベントでライブ配信やアーカイブ動画配信が一般的になり、配信チケットの販売がおこなわれるようになりました。これにより、遠隔地からでもイベントに参加できるようになり、参加者の幅を広げています。特に音楽イベントでは、オンライン配信を視聴するための有料チケットが販売され、新たな収益源となっています。
近年の物価や人件費の高騰は、地域イベントの運営においても大きな影響をもたらしています。
人手不足が進行する中で、警備費などの運営コストが高騰し、さらに物価上昇も相まって宿泊施設や飲食店も料金を値上げせざるをえない状況です。その結果、イベントの集客や運営にも影響を与える可能性が高まっています。持続可能な地域イベントを運営するためには、新たな財源の確保が重要な課題となっています。
アフターコロナの地域イベントにおいて、運営スタッフのミーティングのオンライン化や外国人観光客のための案内サービスの多言語対応など、デジタル活用が進められています。
デジタル活用の具体的な事例をいくつかみてみましょう。
「練馬まつり」や「八王子いちょう祭り」では、デジタルとオフラインを活用して地域を巡る新しい試みがおこなわれました。「デジタルスタンプラリー」と称し、スマートフォンなどのモバイル端末で電子スタンプを集めるイベントを実施。これにより周辺地域の回遊を促進しました。
「青森ねぶた祭」や京都の「祇園祭」では、NFTアートの展示や販売がおこなわれ、新たな収益化の手法として注目を集めています。NFTはデジタルアートに特別な証明書を付け、その作品が本物であると証明する新しい技術です。このようなデジタル技術の活用は、収益化につながるだけでなく、イベントの多様性と魅力の向上に寄与します。
その一方で、イベント関係者のデジタルリテラシーやノウハウの不足が新たな課題となっており、これらの課題を解決する取り組みが急務だといえるでしょう。
資金調達においても、クラウドファンディングなど、新たな手法が模索されています。クラウドファンディングとは、インターネットを通じて資金を募る手法です。クラウドファンディングが成功すれば、低リスクで資金を集めることができるだけでなく、イベント自体のPRや集客にもつながります。
さらに、イベントの協賛としてネーミングライツが利用されるケースも増えています。ネーミングライツとは、例えば「(企業名)presents 〇〇祭」のように、イベント名に協賛企業の名称を付与することです。これにより、その企業のブランド価値向上とイベントの資金調達が同時に達成されます。
これらの新しい試みは、地域イベントを多角的に支える力となっています。
地域イベントを成功に導くためには、多くの自治体にとって集客が大きな課題といえるでしょう。この章では、地域イベントの集客に効果的な様々なWeb媒体やプラットホームとその活用方法をご紹介します。
SNSは地域イベントの集客に非常に有用なツールです。その拡散力と手軽さは、イベント情報を広範に届ける力があります。Instagram、Facebook、TikTok、X(Twitter)などが主要なプラットフォームで、それぞれ特色やメインとなるユーザー層が異なります。イベントの性質や目的に応じて、最も効果的なSNSプラットフォームを選ぶことが重要です。
それぞれのSNSの特性を理解し、地域イベントの集客につなげましょう。
YouTubeは地域イベントの集客戦略において、非常に効果的なプラットフォームです。
特に、有名なYouTuberや地域への訴求力の強いYouTuberとコラボレーションした情報発信は、広範なターゲット層へのアピールに有効です。リーチの拡大を図り、これまでイベントを体験したことのない層への訴求を図りましょう。
SNSやYouTubeが幅広い層へリーチできる拡散力のあるメディアである一方、公式サイトはより詳細かつ整理された情報を提供できる場です。例えば、イベントのタイムテーブル、参加者の声、過去のイベントの写真など、多角的にイベントの魅力を伝えられます。
加えて、申し込みフォームや参加条件、料金体系などを明示することで、参加を迷っている方々に対して、より具体的な行動を促すことが可能です。
また、SNSやYouTubeで訴求する際の誘導先や問い合わせ先としての役割も果たします。すなわち、公式Webサイトは正確で信頼性のある情報を提供する務めがあるといえるでしょう。
Web広告は、地域イベントの集客においてとても効果的な手段の一つです。なぜなら、Web広告ではターゲットとなるユーザー層を地域・年齢・性別・興味関心などで緻密に絞り込めるからです。
また、広告効果の測定も容易であり、どの層が実際に広告を見てアクションを起こしたのかを集計・分析できます。このように、紙媒体やテレビ広告では困難な費用対効果の計測をおこなうことができるのは大きなメリットといえるでしょう。
地域イベントには、多様な層を引きつけ、コミュニティ全体を一体化させる力があります。しかしながら、イベントの成功には計画的な集客戦略が不可欠です。以下で、そのポイントをいくつかご紹介します。
地域イベントでは、地元住民だけでなく観光客も見込み客として考え集客することが重要です。それゆえ、情報提供方法を多角的に設計する必要があります。
例えば、遠方の方々や観光客をターゲットにしたPRにはSNSの活用が有効です。一方、地元の高齢者向けには、地域のコミュニティセンターや回覧板での周知が効果的でしょう。
また、地元住民に向けては、ローカル局やケーブルテレビ、コミュニティFMやタウン誌などの地域メディアでの情報発信も有効です。地元の文化や歴史に焦点を当てた内容で、地域ぐるみで盛り上がるイベントを計画すれば、地元メディアも積極的に取り上げやすくなるでしょう。
地域イベントの参加者にとって、会場に足を運ぶためのアクセス情報は不可欠です。駐車場の有無をしっかりと告知し、多くの集客が見込める場合は臨時駐車場の設置を検討しましょう。また、主要駅からのシャトルバスサービスを用意することも、参加者の利便性を高めるうえで有効な手段です。
加えて、早期申し込み特典・グループ割引・地元住民割引など、参加するメリットやインセンティブを用意しておくことも有効です。
特に交通手段が限られた地域では、最寄りの公共交通機関との連携を図り、割引や特別サービス等を実施して集客につなげましょう。
オンラインでの事前登録やQRコードを用いた入場手続きを導入すると、イベント入場時の混雑を緩和できるだけでなく、当日のスタッフの手間の軽減にもつながります。
イベントの規模によっては、訪日外国人観光客に向けた多言語対応も必要です。
一方で、年配の方などデジタルリテラシーが低い層には、紙ベースでの情報提供や電話での問い合わせ窓口も設けるなどの工夫も大切です。様々な層・各世代のニーズに対応する多様な手段での情報提供と来訪者への対応に務めましょう。
地域固有の魅力や資源を活かし、多くの方々を引きつけるイベントが各地で開催されています。その中でも、特に注目すべきイベントを取り上げ、その独自性についてご紹介します。
島根県出雲市の平田本町商店街では、一風変わった地域活性化イベント「まちおこし人生ゲーム」が開催されています。
このイベントは、人気のボードゲーム「人生ゲーム」を商店街を舞台に再現。参加者はルーレットを回し、指示に従って各店舗を訪れ、様々なミニイベントや課題をクリアしながら、イベントを楽しみます。
2016年には2,503人がこのイベントに参加するなど、商店街の活性化に貢献しています(※3)。また、イベントの反響を受け、他県でも同様のイベントが開催されるようになりました。地域コミュニティとビジネス、遊びが融合した「まちおこし人生ゲーム」は、新しいまちおこしの形として注目されています。
※3)島根県 輝々(キラキラ)しまね・つくるはぐくむ地域ブランド12
「高槻ジャズストリート」は大阪府高槻市で毎年ゴールデンウィークに開催される音楽イベントです。2023年で25周年を迎え、地域観光資源としても大阪府に認定されています。約800組のアーティストが国内外から集まり、公共施設・飲食店・神社・バス車内を含む高槻市内の75会場で演奏します(※4)。
このイベントの特筆すべき点は、地元企業やボランティア実行委員会の協力によって、すべての会場が入場無料であるところです。例年10万人以上が参加する「高槻ジャズストリート」では、フリーマーケットやキッチンカーも出店され、幅広い方々が楽しめる内容となっています。
※4)PRTIMES 街中がジャズに包まれる2日間!日本最大級のジャズイベントが今年も高槻市で開催
地域の魅力を伝え、集客を増やすための手法の一つが、Web広告配信プラットフォームです。
ここでは、自治体による効果的なデジタルマーケティングをサポートする、マイクロアドの「まちあげ」をご紹介します。
「まちあげ」は、マイクロアドのマーケティングデータプラットフォーム「UNIVERSE」が収集・分析する多種多様なデータを基に、地方自治体の施策に親和性の高いターゲット層へ効率的な広告配信ができるサービスです。例えば、位置情報データを活用することで、過去にその地域を訪れた方や、地域にゆかりを持つ層へのターゲティングが可能です。
また、広告配信後の効果計測として、来訪者の多いエリアを可視化できる点が特徴です。具体的には、広告に興味を示された方の県や市への来訪予測をおこない、推定消費額を算出できます。これによって広告の費用対効果を数値化し、より効果的なプロモーションを実施できます。
「まちあげ」は独自のデータ分析によって、それぞれのイベントや施策に最も効果的なターゲット層を特定できます。さらに、一度の広告配信で得られるデータを次回に活かすことにより、持続的にプロモーションを行うことで、集客効果が見込めます。
このように「まちあげ」は、地域イベントの集客だけでなく、地方自治体全体の活性化に寄与する広範で効果的なマーケティング手法といえます。
多くの自治体が、地域イベントの運営と集客において様々な変化と課題に直面しています。一方でそんな状況だからこそ、創造性と柔軟性が求められているともいえるでしょう。アフターコロナの新しい環境下で、Web広告やデジタルツールの活用など、集客のための新たな取り組みがますます不可欠となります。
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