これまでデジタルマーケティング業界において、3rd Party Cookieは有益な仕組みとして使われてきました。
しかし近年、3rd Party Cookieのトラッキング機能が持つ負の側面が問題視されるようになり、世界各国において3rd Party Cookieの規制が始まっています。
Cookie規制が進む中で、Cookieに代わる存在はあるのでしょうか?
また、どのようなマーケティング戦略をとるべきなのでしょうか?
3rd Party Cookie規制の背景と、デジタルマーケティング業界がとるべき今後の対応について解説します。
目次を表示
1.1 デジタルマーケティング戦略に必要不可欠であったCookie
1.2 デジタル上の行動分析による広告の最適化
2.1 きっかけはGDPR(個人情報保護法)の施行
2.2 Chromeは2023年に廃止
2.3 リターゲティング・リマーケティング広告の精度が落ちる
3.1 Cookieを完全に代替できるデータはない
3.2 デジタル広告分野で活用できるデータと不足する要素
3.3 マイクロアドがGoogleのPrivacySandboxを活用した新しい広告サービスを提供予定
3.4 マイクロアドがLiveRamp社と提携し、Post-Cookieに対応した広告配信を開始
3.5 マイクロアドがIM-UIDと連携した新しい広告配信技術の強化
4.1 コンテンツ解析によるターゲティング
4.2 様々な業界で活用可能
Cookieとは、ブラウザとサーバーのやりとり履歴を保持・管理する仕組みです。
Cookieは、1st Party Cookieと3rd Party Cookieに分けられます。
1st Party Cookieは、訪問しているWebサイトから直接発行されるCookieです。
一方、3rd Party Cookieは、訪問しているWebサイト以外から発行されるCookieを指します。
3rd Party Cookieには、サイトを越えて追跡できる特性があり、3rd Party Cookieを利用して利用者のデジタル上の行動の把握が可能です。
3rd Party Cookieの特性は、下記のようなものに利用されています。
・広告の効果測定
・リターゲティング広告
・アフィリエイト
・アトリビューション分析
後日、ニュースサイトなど別のWebサイトを閲覧しているときに、先日チェックした鞄の広告が表示されていた、といったご経験はないでしょうか。
これがリターゲティング広告と呼ばれるものです。
ECサイト上でとった行動データを別のサイトで活用し、広告配信を行っているのです。
これまで企業は、デジタルマーケティング戦略に3rd Party Cookieを利用してきました。
3rd Party Cookieを利用してユーザーのデジタル上の行動履歴を分析すれば、個人の趣味や嗜好、関心のある分野が手に取るように分かります。
これにより、コンバージョンさせるための確度の高い広告の出稿が可能となります。
また、3rd Party Cookieは人的コストを抑えつつ、必要な情報の入手が可能です。
言葉を選ばなければ、安く・簡単に・必要な情報が手に入る便利な仕組みであったといえます。
デジタル上の行動分析の有効性は、多くの企業が知るところでしょう。
3rd Party Cookieを活用すれば、興味のあるユーザーに狙いを定めて広告を出せるため、CPAやCPOを抑えられます。
企業のコストカットにつながり、利益を増やす効果が期待できるでしょう。
また、ユーザーにとって必要な情報を、適切なタイミングで届けられます。
どんなに魅力的な広告でも、タイミングを逃してしまえば意味がありません。
Cookieは企業と個人の双方に利益をもたらす好ましい仕組みとして利用されてきました。
Cookieを利用したデジタルマーケティング戦略は、企業の柱であり、業績拡大のために不可欠な仕組みです。
しかし、個人情報保護への意識の高まりにより、3rd Party Cookieは規制の方向に動いています。
3rd Party Cookieのサイトを越えて追従できる仕組みが、問題視されるようになったからです。
「デジタル上の行動履歴は個人情報ではないか?」「個人情報を本人の意志と関係なく利用するのは、問題ではないのか?」との考え方が広まり、3rd Party Cookieの負の側面に注目が集まるようになりました。
3rd Party Cookieの規制が一気に強まったのは、EUにおけるGDPRの施行が始まりです。
GDPRとはEUにおける個人情報(personal data)の取り扱いを明記した法律です。
デジタルマーケティング業界において、GDPRで特に注目すべき点は、日本法では単体としては個人情報に該当しないCookieやIPアドレスが、個人情報(personal data)として取り扱われている点です。
その後日本国内でも、2022年4月1日に施行された改正個人情報保護法において、CookieやIPアドレスなどの情報が「個人関連情報」に位置付けられ、その取扱いに関する規制が明文化されました。
一例としては、個人関連情報を第3者に提供する場合において、提供先の企業が、自身が保有する個人情報と提供を受けた個人関連情報を紐づけて利用する場合は、本人の同意を得ることが必要であることが明記されました。
今後、デジタルマーケテイングを行う企業は、個人関連情報の扱いをより一層慎重に行うべきでしょう。また、将来の法制度、業界ルールにも着目する必要があります。
GDPRの施行を受け、ITベンダーもその流れに追従しました。
ChromeとSafariは徐々にCookie廃止の方向に動き始めます。
AppleはSafariのサイトトラッキング防止機能としてITP(Intelligent Tracking Prevention)を導入しました。
2017年に3rd Party Cookieの機能が制限されはじめ、その後1st Party Cookieまで拡大しています。
2020年には3rd Party Cookieは完全にブロックされました。
またChromeでもついに2024年後半に3rd Party Cookieの廃止が決定しています。
ChromeとSafariを合わせるとブラウザシェアは約8割となるため、デジタル業界においての大きな変革といえるでしょう。
こうした流れにより、今後はCookieを利用したデータ収集及びデジタル広告の利用ができなくなると言われています。
Cookieが使えなくなれば、リターゲティングやリマーケティング広告の精度の悪化が予想されます。
リターゲティング広告は、一度サイトを訪れたユーザーに対し、配信される広告です。
また類似するWebサイトに訪問した場合にも、その行動履歴から広告配信が可能で、その場合は3rd Party Cookieのデータを活用します。
そして、ユーザーが比較検討している期間に広告を配信し、成約へと誘導していきます。
そのため、Webサイトを訪問し行動履歴が追えないユーザーに比べ、高確率でコンバージョンできるのが特徴です。
しかし、Cookieによる情報収集が不可能になれば、訪問履歴のあるユーザーの特定が難しくなり、効果的なリターゲティング広告の運用ができません。
そうなれば、今までのような成果は期待できないでしょう。
別の方法でターゲットを設定するなど、広告配信の方法を変更しなければなりません。
尚、リターゲティングとリマーケティングは表現が異なるだけで、同じ内容の広告ですので、普段リマーケティング広告として活用されている方も、同様に注意が必要です。
3rd Party Cookie規制による最大の問題点を挙げてみましょう。
実は現段階でCookieと同じ役割の技術は存在しません。
そのため、Cookie廃止後にどのような手法を用いて効果的な広告を配信するべきかが、デジタルマーケティング業界における緊急の課題となっています。
2022年7月現在、Googleは3rd Party Cookieの代替として、プライバシーに配慮したPrivacySandboxの取り組みを進めています。
2021年初頭の段階で、30を超える技術が開発・提唱されています。
その中でさまざまなAPIを提供していますが、Cookieのように個人の好みや行動を詳細に把握できるわけではありません。
カテゴリーとして大まかに捉えるのみです。
例えば、Googleが提唱している「Topics」はPrivacySandboxの取り組みの一環で、閲覧履歴からユーザーの興味関心のある分野(トピック)を推測するアルゴリズムです。
ユーザー個人に関する情報が一切含まれない点がCookieとは異なります。
Topicsは、350種類のトピックのうち、出現率の高いトピックを返答する仕組みです。
また、PrinacySandboxにおいては、ユーザーの情報が直接ブラウザに保管されます。
つまり、ユーザーの情報が広告サーバに集約されない状態で、広告を配信するのです。
Cookieの情報は、すべてサーバーを通したやり取りから得られていました。
この点も、CookieとPrivacySandboxの相違点です。
CookieとPrivacySandboxでは、得られる情報も情報収集の仕組みも変わるため、今までと同じ分析手法は使えません。
今後どのような広告サービスが生まれるのか、注目していきましょう。
最強の情報収集の仕組みであるCookieが廃止されたあと、デジタル広告分野で重要となるのが、1st Party DataとZero Party Data(ゼロパーティデータ)です。
1st Party Dataとは、企業自らが収集し、保有している顧客データです。
会員登録時に入力した名前や住所、電話番号などが1st Party Dataにあたります。
また、企業のオウンドメディア上で閲覧やアクションをした行動データも含みます。
例えば、ECサイトを運営していた場合、そのECサイト上で「どの商品を何回閲覧したか、何分閲覧したあとに購入したのか」といった行動データも1st Party Dataの一つです。
1st Party Dataの特徴は、コストをかけずに収集が可能であり、データ元が明確で信頼性が高い点です。
一方、Zero Party Dataとは、顧客が自ら進んで企業に提供するデータです。
主に、ヒアリングやアンケートなどで情報収集を行います。
質問の仕方によっては、個人の好みや潜在的なニーズを知れるため、貴重なデータといえます。
Zero Party Dataは1st Party Dataに比べ、より内面的な情報です。
うまく活用すれば、効果的なデジタル広告につなげられます。
しかし、Zero Party Dataは顧客自身にメリットがないと提供しない場合もあるため、データ収集に苦難をともなう点がデメリットです。
また、1st Party DataもZero Party Dataも、信頼性の高い情報であるものの、自社サービスを利用していない潜在層へのアプローチはできません。
そのため、潜在顧客のニーズが捉えにくい側面があります。
そして、どちらのデータも、顧客自身が提供しないと判断した情報は入手できません。詳細な情報分析を行うには、多くの情報が必要です。
そのためには、Zero Party Dataを顧客から引き出す努力が求められます。何を・どう聞けばこちらが望む情報を得られるのか、工夫が必要です。
さらに、1st Party DataとZero Party Dataを収集できたとしても、うまく活用できなければ意味がありません。
収集したデータを効果的な広告に生かすための手腕が問われるでしょう。
こういった背景を踏まえ、マイクロアドでは2024年下半期に向けてPrivacySandboxを活用した新しい広告サービスを開発中です。
これは、PrivacySandboxが提供するCookie機能の代替となるAPIで、その機能をフルに活用し、Cookieレスでもターゲティング性能が担保可能なサービスを開発予定です。
また2022年の1月より、LiveRamp社と提携し、Post-Cookieに対応した広告取引に対応しており、媒体社の収益化支援を開始しております。
マイクロアドの運営するSSPサービス「MicroAd COMPASS」において、LiveRampが提供する「RampID」を活用した広告配信の支援や、「RampID」の発行を行うための、IDソリューションである「ATS(Authenticated Traffic Solution) 」の導入・実装の支援を行っています。
RampIDはメールアドレスなどを暗号化した1st Party Dataの情報を用いて作成される確定IDと呼ばれるものです。確定IDはプライバシーを保護しながら限りなくCookieと近い動作を実現するため、Cookieを活用しなくても精度が高いターゲティング広告配信ができることがメリットです。
今後マイクロアドでは、SSPサービスであるCOMPASSを軸としてRampIDの発行を促進することで、取引規模を拡大していく予定です。
2022年11月より、インティメート・マージャー社が提供をする3rd Party Cookieに依存しない共通IDソリューション「IM Universal Identifier(以下IM-UID)」と連携して新しい広告配信技術を実現します。
「IM-UID」では、3rd Party Cookie を利用せずに、異なるドメイン間で3rd Party Dataを連携することが可能になります。
プライバシーに配慮したターゲティング広告配信ができるだけでなく、Appleのブラウザ「Safari」におけるCookieの利用規制により広告配信が困難であったiOSデバイスにおいても、「IM-UID」と連携することで広告配信を行うことが可能になることが大きな特徴です。
今後マイクロアドでは従来のCookieと同様の動きをする新しい技術の導入や新しいターゲティング技術を開発予定です。
次章では、Post-Cookieに対応した広告配信手法の一つである「Contextual Targeting」サービスについて紹介します。
Contextual Targetingとは自社サービスに興味を持ったユーザーが訪れるであろうWebページを抽出し、広告を配信する手法です。
3rd Party Cookieを活用した配信では制限されていたiOSユーザーにも対応が可能なため、これまでAndroidユーザーに偏っていた配信状況も改善されます。
Contextual Targetingでは独自のAIにより、Web上のコンテンツを5つの階層構造から形成される約3,000カテゴリに分類します。
訴求商材と親和性の高いWebサイトを抽出し、ユーザーの興味・関心のある広告を瞬時に配信していきます。
また、配信前の事前分析も可能です。
さらに、平均クリック単価:52円、平均動画視聴完了単価:2.3円(動画秒数15秒)と既存サービスの3〜4倍の優れたコストパフォーマンスを可能にします。
Contextual Targetingは、ユーザーが、訴求商材と親和性の高いコンテンツを閲覧しているタイミングに合わせて、適切な広告の配信をします。
例えば、化粧品ページの閲覧時には化粧品広告を、健康コンテンツページの閲覧時には健康に関する広告を配信します。
化粧品関心層に対し、すべてのサイトで化粧品広告を配信するAudience Targetingに比べて、ユーザーの目が広告に向きやすいのが特徴です。
これにより、業界・業種を問わず効率のよい広告配信が可能となります。
Cookieレスマーケティングについて知りたい方は、こちらから資料のダウンロードが可能です。
「PostCookie時代の広告市場はどう変化する?Cookieレスマーケティングの手法を解説」資料ダウンロードフォーム
これまで、デジタルマーケティングの戦略には3rd Party Cookieが利用されてきました。
3rd Party Cookieでユーザーのデジタル上の行動を把握すれば、効率の良い広告配信が可能だからです。
デジタルマーケティング業界において、Cookieは必要不可欠であったといえます。
しかし、世界各国における個人情報保護への意識の高まりにより、Cookieは今後使用できなくなります。
2022年7月現在、Cookieの完全な代替となる技術は存在せず、各企業は新たなデジタルマーケティング手法を探さなければなりません。
1st Party DataやZero Party Data、GoogleによるPrivacySandboxなど、Cookie以外の情報や情報収集ツールを組み合わせて、新しい広告配信の形に対応していく必要があります。
マイクロアドのポストクッキーソリューション「Contextual Targeting」は、独自のAIにより網羅性の高いコンテンツカテゴリを実装できます。
訴求素材と親和性の高いコンテンツの閲覧時に、タイミングを合わせた適切な広告配信が可能です。
また、事前分析も可能で、コストパフォーマンスが高いのが特徴です。
ポストクッキーの広告ソリューションに関してご興味がある方、ぜひお気軽にお問い合わせください!